夏井川渓谷の隠居へ出かけたら、地元の区長さんが回覧資料を持ってきた。家の前を車で通ったかして、私が来ていることを知ったのだろう。資料には、福島県いわき建設事務所長名で2月末、土砂災害防止法に基づく基礎調査結果の説明会を開くので出席を、とあった。わが隠居のそばの小さな沢が対象区域のひとつになっている。「出席して話を聞かないとね」と区長さんに答える。
渓谷では絶えず小さな落石が発生している。大雨や地震が引き金になって大規模な崩落が起きることもある。東日本大震災のときがそうだった。渓流沿いの県道はしばらく通行止めになった。
土石流も警戒しないといけない。いわき市は平成27(2015)年、防災マップ改訂版を出した。新たに土砂災害警戒区域、同特別警戒区域を掲載した。同26年8月、広島県の大規模土砂災害を踏まえたもので、夏井川渓谷では人家のある4カ所の沢が「土石流危険渓流」「同危険区域」として書き込まれた。このマップで、渓谷の隠居が土石流に巻き込まれる可能性があることを知った。
渓谷の左岸、県道小野四倉線、JR磐越東線の山側に小さな沢が連続する。回覧資料に土砂災害警戒区域等の指定図(案)があった=写真。わが隠居は「下の沢地区」の土砂災害警戒区域に引っかかり、隣の地区の友人宅は同特別警戒区域内に含まれる。隠居のそばの沢が「下の沢」というのを初めて知った。通称地名だろう。
地元の人は、身を守るために地形的な特徴を記憶し、通称地名として共有化し、次の世代に伝えている。じいさんから「ここはジャクヌケ」「ここは〇〇のボッケ」などと実地に教えられた知人がいる。
「ボッケ」は小高い丘で、「ジャクヌケ」は土砂崩れ(土石流)が起きやすい沢のこと。「ジャクズレ」「ジャヌケ」というところもある。隠居のある牛小川では「ジャッコケ」(土砂崩れがあったところ)という言葉を聞いた。広島市の大規模土砂災害では多くの住民が亡くなった。もともとの地名は「ジャラクジアシダニ」(蛇落地悪谷)だった。ジャのつく地名は要注意ということがわかる。
説明会では①土砂災害防止法②基礎調査結果③警戒避難体制――について建設事務所の担当者が話す。宵の6時半から1時間の予定だという。いのちにかかわることなので、晩酌を返上してまちから会場の江田・牛小川集会所へ駆けつける。
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