5月後半のことだが、いわき民報にヤマニ書房本店調べの「ベストセラーランキング」が載った。なんと、いわき地域学會発行の『いわきの地誌』が一番上にあるではないか=写真。5月7~13日の1週間にかぎっていえば、『NHK大河ドラマ・ストーリー「おんな城主
直虎」』(後編)や、又吉直樹の『劇場』、村上春樹の『騎士団長殺し』(第1・2部)より売れたことになる。
同9日にいわき民報、11日に福島民報が『いわきの地誌』を記事にしてくれたのが大きい。直後に、同書店と鹿島ブックセンターから追加注文があった。活字メディアだけでなく、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のフェイスブックでも、拙ブログへのコメントとして「買います」「買いました」がいくつか寄せられた。直接、「買いました」と声をかけてくれる人もいた。
ローカル紙に載った、ローカルな書物の、ローカルな「ベストセラーランキング」だとしても、これは“快(怪)現象”というほかない。いわきの自然地理・人文地理のほかに、都市機能的地域区分、災害地理などを論じ、震災前からのいわきの課題、震災後に生まれた課題などをおさえた本であることが、手に取ってもらえる理由だろうか。
たとえば、いわき市の山里、小川町上小川の<限界集落「戸渡(とわだ)」の問題>という事例研究(156~157ページ)――。戸渡の地理的位置・自然環境・人文環境のほかに、地域づくり運動=戸渡リターンプロジェクトの活動と、原発事故による地理的事象(追い出された集落)の様子を紹介している。
個人的には、空撮家酒井英治さんから提供してもらった空撮写真に引かれる。とりわけ「好間のV字谷(表生谷)」は、山とV字の谷の様子が一目でわかる貴重なものだ。「自然の彫刻を、鳥の目で一番美しくとらえた写真」からは、大地の営みの厳かささえたちのぼってくる。
細部に「いわきの今」が宿っている。いわき市民だけでなく、双葉郡からいわきに避難している人たちにもぜひ読んでもらいたい本だ。
「大人には再度の郷土勉強、子どもたちなら新しい地域発見になろう」。ゆうべ(6月13日)は、いわき民報の1面コラム「片隅抄」に紹介された。最初から“赤字出版”ながら、買って読んでもらえることでその幅を縮めることはできる。もう少しで“出血”が止まる。
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