2017年6月21日水曜日

タカノリさんの夢を見た

 朝方、夢を見た。山里のいわき市三和町で私とタカノリさんがワラビ採りをしている。そこへ、元職場の後輩Hクンがやって来る。歴史研究家であるタカノリさんに“一日弟子入り”をしたようだ。<お前も来たのか>といった感じで、私が後輩を見ている。そばでは、地元のおばさんたちが袋を破って肥料を見せ、<これを畑にまくといいんだよ>と言っている。
 夢は何の脈絡もなく展開し、目が覚めると霧のように消える。ところが、この夢は目覚めても明瞭だった。タカノリさんは東日本大震災が発生する前年、平成22(2010)年5月30日、共通の知人の通夜へ行った深夜、帰宅直後に急死した。享年69。7年ぶりに“再会”した。

 タカノリさんとは、いわき市江名町で生まれ育った歴史研究家佐藤孝徳さんのことだ。いわき地域学會が旗揚げする前からの知り合いで、会設立後は彼の著書『昔あったんだっち』や『専称寺史』などの校正を引き受けた。

 ただの古文書(こもんじょ)読みではない。歴史や民俗にとどまらず、農林水産業にも精通していた。元船主のせがれで、漁業にはすこぶる詳しかった。持ち山に案内してもらい、キノコのアミタケをいっぱい採ったことがある。野菜も栽培した。

 おととい(6月19日)は桜桃忌、太宰治の命日だった。たまたま近所の知り合いからサクランボ=写真=をいただいた。『専称寺史』にかかわったせいか、サクランボを食べると、専称寺―貞伝―今別―津軽―太宰のラインが思い浮かぶ。

 平・山崎にある専称寺は、かつては浄土宗の奥州総本山だった。名越派檀林、つまりは大学でもあり、東北地方から学生がたくさんやって来た。『専称寺史』で、同寺で修学した名僧を何人も知った。その一人が、津軽は今別の名刹・本覚寺の5世、貞伝(1690~1731年)。海峡を越えて蝦夷(北海道・千島)へも布教に出かけている。
 
 貞伝は「栽培漁業」の元祖のような人でもある。だし昆布として有名な「今別昆布」は、貞伝が漁獲の不安定に苦しむ漁師たちの生活を案じ、読経とともに海に紙片をまいたところ、それが昆布になったという伝説がある(今別町ホームページ)。
 
 いい夢だった。初物のサクランボがタカノリさんに会わせてくれたのかもしれない、というのはこじつけだが、夢で少し幸せな気分になった。

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