この半月の間に、アメリカ人のおおらかさと、バングラデシュ人の敬虔さに触れた。
アメリカの学生はジャーナリズムを専攻している。夏休みを利用して、東日本大震災・原発事故の取材旅行に参加した。
一泊した翌日、学生たちは事故を起こした東電の1F(いちえふ)を見学した。パスポートがないと入れない。ところが、1人がゲストハウスにパスポートを忘れた(その顛末は6月2日、拙ブログに書いた)。
翌朝、集合場所でボランティアの市民通訳が話していたことだが、1人が双葉郡のスーパーで紙幣(1万円札と千円札)を落とした。それに気づいて、立ち寄り先に確かめたところ、ちゃんとおカネが保管されていた。落とし主は? ゲストハウスに泊まったもうひとりの学生だった。「アメリカではおカネは戻らない、日本だから戻ってきた」。そんな話になったそうだ。よりによって2人が話題を提供するとは。
その1週間後。シャプラニール=市民による海外協力の会の全国キャラバンが行われた。バングラの現地スタッフが家事使用人の少女の実態と課題を報告した。
バングラは高温多湿の国。気温36度の世界から日本へやって来て、まず仙台で、次に福島、そしていわきで支援活動の状況を話した。いわきの夜も「寒かった」。会場のアートスペースもりたか屋から外に出ると、彼女はショールを「真知子巻き」にした。
翌朝、帰京するのにいわき駅前のバスターミナルへ送り届ける。その車中での、スタッフの話。「寝るとき、西はどっちかと聞かれた」。“西枕”で寝たらしい。メッカの方角を確かめたということか。寝る方角は日本人も気にする。仏様になったら“北枕”だが、生きているうちは南か東が普通だろう。現にわが家は“南枕”だ。アメリカ人も日本式にふとんに“南枕”で寝た。
もうひとつ、驚いたことがある。アメリカの学生のうちゲストハウスに泊まった1人を含む3人が、いわき滞在3日目の朝、「郡山へ行く」と言って集合場所からいわき駅へ向かった。
郡山へ行って、そのあとどうしたのか。1週間後の朝日新聞(福島浜通り版)=写真=でどこへ行ったのかわかった。阿武隈の山村、葛尾村で原発事故の影響を取材し、民泊するダークツーリズムに参加したのだった。「世界最大規模の民泊予約サイト」がある。それで葛尾訪問を決めたという。おおらかで自由なアメリカ人らしい別行動だった。
インバウンド(訪日外国人旅行)でも、有名観光地より山里の暮らしに触れるようなディープな旅を求める人々は、この民泊予約サイトをよく利用する。
1年前、震災後に知り合ったフランス人女性写真家らとゲストハウスに泊まった日本の若者がいる。京都の郊外の山里に住み、多言語能力を生かしてインバウンド事業(里山ツーリズム)を手がけている。民泊予約サイト経由で外国人観光客がやって来る。インターネットは良くも悪くも人間の行動範囲を広げ、観光の中身を変えつつあるようだ。
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