2017年10月27日金曜日

台風と杉の葉

 杉の枝葉は風に弱い。台風21号がいわき沖を通過した10月23日午後、夏井川渓谷の隠居へ出かけた。途中に2カ所、杉のミニ林がある。路面が杉の枝葉で覆われていた。大風が吹くと必ずそうなる。
 隠居で昔野菜の「三春ネギ」を100本ほど、「いわき一本太ネギ」を30本ほど栽培している。どちらも風に弱い。
 
 23日午前、閉塞されている夏井川河口を見に行った。大水が砂の壁をぶち抜き、太平洋に注いでいた。河口までの両岸にネギ畑がある。品種改良がされた、風折れしにくいネギだが、土寄せが甘かったところはうねの両側に倒れ、白根がのぞいていた。
 
 それを見て、隠居のネギの無残な姿が思い浮かんだ。駆け付けると、ほとんどが北に向かって倒れていた=写真。嘆いているひまはない。すぐネギを起こし、土を寄せる。折れた葉は回収し、味噌汁や卵焼きなどの具にした。
 
 芽生えたばかりのネギ苗は――。なんと、一部の地面が盛り上がって割れている。直下にモグラの通り道ができた。ネギ苗の根が地中で浮いたら枯れてしまう。こぶしで土を押し戻したが、またトンネルができそうだ。難敵が現れたものだ。
 
 風による倒伏、モグラによるネギ苗の枯死だけではない。雨が続いて湿気に弱いネギがとろけてしまった、なんて話も聞く。隠居では、根腐れ防止のために溝を浅くして土を高く寄せることにしたが、台風には無力だった。いや、それ以上に土寄せが甘かった。
 
 台風一過後の24日、福井県のJR北陸本線南今庄駅で列車がホームをオーバーランするトラブルが相次いだ。ホームだけの駅の南側に杉林がある。杉の枝葉が台風で線路敷地内まで吹き飛ばされた。で、線路にのっかった杉の葉で列車の車輪が滑り、ブレーキの利きが甘くなった、ということらしい。
 
 夏井川渓谷の磐越東線も、紅葉の時期になると落ち葉が線路敷地内に散乱する。11月にはたまに、雨による濡れ落ち葉が原因で車輪が空転し列車が遅れた、という記事が新聞に載る。昔、渓谷の古老から聞いた話だが、朝起きると線路に落ち葉が積もっていないかどうか見回ったものだという。あれば除去する。自発的な行為だ。山里ではときどき、街場では想像もできないような自然との葛藤がおきる。

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