「もう50年ほど前になるんだよ。オレが19歳だったから」。いわき市泉ヶ丘のギャラリーいわきで阿部幸洋新作展が開かれている(10月10日まで)=写真。初日5日に出かけた。雑談のなかで初めて会ったときの話になった。
阿部はスペイン在住の画家。いわき市平出身で、毎年帰国してはいわきを主に個展を開く。今年(2017年)、いわきでは2回目の開催だ。
「緑川宏樹さんに会ったのは草野美術ホールだったっけ?」と私。「そうじゃないの」。前衛陶芸家の緑川さんが、母親の出身地であるいわきに移住したのが昭和50(1975)年。取材で知り合ったというよりは、美術家たちとワイワイやっているうちに知り合ったような記憶がある。画家松田松雄には同ホールで会った。岩手なまりと長靴姿が強烈な印象として残っている。2人ともすでに彼岸へ渡った。
瀬戸物屋に日用雑器をつくって納めるのが陶芸家の仕事――当時そう思っていた私には、日用品とは無縁の作品(“紙ヒコーキ”など)をつくる緑川さんの仕事が衝撃だった。一気に陶芸と陶芸家の概念が変わった。日用品づくりからオブジェ制作、今でいうインスタレーションまで広がった。陶芸教室も開いた。陶芸を趣味にする市民が増えた。
緑川さんは松田とともに、市立美術館の開館へとつながった市民団体「いわき市民ギャラリー」の活動をリードした。
去年(2016年)に引き続き、「いわきの現代美術の系譜」と題するシンポジウムが来週土曜日(10月14日)、平・三町目のアートスペースもりたか屋で開かれる。いわきまちなかアートフェスティバル玄玄天の一環だ。
去年は画家松田松雄について語り合った。今年は陶芸家緑川宏樹について語り合う。去年に引き続き、出てしゃべれというので、阿部から少しでも多く情報を仕込んでおくことにしたわけだった。
さて、この半世紀近くの間に阿部の個展を何十回見たことだろう。「今回は色が明るいね」「基本的には何も変わらないけど、そのときの気分や思いは反映されるよ」という。
今を語り合いながらも、しかし毎回、半世紀近く前の出会い・交遊の記憶がよみがえる。そのときの“酔虎談”になる。草野美術ホールの全盛期とそれぞれの青春が重なっていたからこそだと思う。かけがえのない人間とはそこで出会った。
追記:日付が変わるころ、楢葉町や川内村で震度5弱、いわきで4の大きな地震があった。寝入りばなだったが、目が覚めた。けさ、階段と2階の様子を確かめる。本が落下するようなことはなかった。階段の本は手すりが支えになっていたので、5弱でも大丈夫だったろう。
追記:日付が変わるころ、楢葉町や川内村で震度5弱、いわきで4の大きな地震があった。寝入りばなだったが、目が覚めた。けさ、階段と2階の様子を確かめる。本が落下するようなことはなかった。階段の本は手すりが支えになっていたので、5弱でも大丈夫だったろう。
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