2018年9月23日日曜日

アカイカタケその後

 9月の第2土曜日(8日)午前、いわき市小川町の山中でキノコ観察会が開かれた際、“超珍菌”のアカイカタケを採集したことを報告した。以下はその要約。
いわきキノコ同好会が主催した。案内はがきには書いてないが、小川町の林道で女性会員が日本固有のトリュフ「ホンセイヨウショウロ」を発見した。イノシシがミミズを探して土を掘り返したらしいあとに転がっていたという。会報といわき民報の報道でそれを知り、がぜん、トリュフが発生した環境に立ちたいと思った。

林内には入らず、林道を行ったり来たりして写真を撮るだけにする。それがよかった。林道へりの草むらに妙ちくりんなかたちをした赤いキノコが生えていた。アカイカタケだった。

 パッと見には16本の触手を持った赤いイソギンチャクで、一口大のケーキのようにも見える。平たい頂部には、凝固しかかった血液、あるいはゼリーのような層がある。かぐと腐臭がする。これが、胞子の運搬役のハエを呼ぶ。

いわきキノコ同好会会長の冨田武子さん(いわき市)に見せ、同会会員で福島きのこの会会長でもある阿部武さん(石川町)にも聞いて、「福島県内にも関東にも記録はない、非常に珍しいキノコ」(阿部さん)であることを知った。

観察会から2日後、阿部さんから手紙が届いた。吉見昭一著『おどるキノコ――イカタケのひみつ』(岩崎書店、1983年)という児童図書があることを知って、図書館から借りて読んだ。以下はその感想。

ざっと40ページの、写真を主体にした本で、前半はもみがらに生える白いイカタケの生長記録、間にカゴタケが入り、「あとがき」を含む残る10ページをアカイカタケの観察記録に当てている。

卵型の幼菌が割れて触手が伸長する様子は――。午前2時ごろ、表皮が割れる。しかし、そのあとは変化がなく、翌日の夕方にやっと開いて終わったという。アカイカタケは腕を開いてから2日も残っていないそうだから、小川の山中で見た個体は最も生きいきとしていた状態のときに撮影・採集ができたようだ。

併せて、ネットで1983年以降の採集例を探ってみた。1995年山口県、99年京都府・埼玉県・愛媛県、2003年京都府・神奈川県、04年榛原町(静岡県、奈良県どっち?)、07年京都府、09年神奈川県、13年京都府というあたりまではわかった。東京以北、少なくとも東北地方では初めての採集らしい。

『おどるキノコ』のあとがきでアカイカタケの希少性を再認識する。「イカタケ・カゴタケ・アカイカタケやシマイヌノエフデタケ(3種)・キヌガサタケ・ウスキキヌガサタケなどは、熱帯の地で発生する腹菌類というキノコです。その分布や生活はくわしくはわかっていません。どのキノコも短いいのちです。よほど注意し、見つけたらすぐ研究しないとわかりません。大勢の人の協力が必要です」

熱帯産の腹菌類(傘や柄とはかなり異なった特徴を示す菌類を便宜的にまとめた呼び名)がいわきでも見られるようになったことの意味を考えねば――。

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