2018年9月19日水曜日

「終わり初物」のキュウリ

夏井川渓谷の小集落には「終わり初物」という言葉がある。「初物」は文字通り、シーズン最初に収穫・採取、あるいは買って口にする野菜・果樹・山菜・キノコなどのことだ。「終わり初物」はその逆で、収穫・採取が「これで終わり」というときに使う。
今年(2018年)はキュウリが当たった。4月29日、街の種屋で買った苗2本を渓谷の隠居の庭に植えた。7月6日に初めて3本を収穫すると、カミサンが「初物だから」と床の間に飾った。

それからは週2回のペースで収穫した。毎回8本前後が採れた。9月に入るとさすがに葉が疲れてきたが、それでも花を咲かせた。3連休真ん中の日曜日(9月16日)、見ると曲がったり、先っちょだけ肥大したりしたものが5本ぶら下がっていた。いよいよこれで株の元気が尽きた、終わり初物だ=写真。

 ちょうどこの日、隠居でミニ同級会が開かれた。いわきの魚屋の刺し身、いわき産のナシ、ブドウのほかに、このキュウリの浅漬けなどを出した。魚屋はこうで、種屋はああでと、能書きを語るのもホストの特権ではある。

その能書き、あるいはブログに描かれた庭の畑とはどんなものか。同級生の一人が「畑を見たが……」と言いかけるのを制して答える。「『どれほど広いかと思ったら、たいしたことないじゃないか』と言いたいんだべ」。面積としては6畳二間くらいある。が、実際に使っているのはその半分だ。

原発震災前は狭いながらに少量・多品種を実践した。隠居へ遊びに来たオーストラリア人から「ベジパッチ」という言葉を教えられた。なるほど、野菜のパッチワークの場か。震災前のようにそれができればいいが、そこまでにはいっていない。

ま、それはともかく、今年はキュウリが1株当たり最低でも50本は生(な)っただろう。7~8月は猛暑続きで、キュウリには過酷な環境だったが、収穫するたびに根元にたっぷり灌水した。追肥もした。やり方次第ではもっと生らせることができたかもしれない。

イメージにあるのは、同じ種屋にブルーム苗を大量に注文して栽培している篤農家Sさんのキュウリだ。ブルームとは、実から自然に出てくる白い粉のようなロウのことだ。ブルームキュウリは皮が薄くてやわらかい。糠床に入れるとすぐ漬かる。Sさんの家の糠漬けは絶品だ。

 カミサンがコープに注文したブルームキュウリと、スーパーから買ってきたブルームレスキュウリを同時に糠漬けにして食べたことがある。ブルームレスの皮の硬さがはっきりわかった。わが菜園のキュウリは、白い粉はふかなかったが、皮のやわらかさからするとブルームに近い。

次に菜園へ行ったとき、感謝をしつつキュウリの株を引き抜こう。跡を三春ネギの苗床にするために――。

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