山中の雑木林でキノコの採集を終えたあとは、平地の小川公民館へ移動して鑑定会が行われた。
昼食後、テーブルに新聞紙を広げ、さらに調査票(和名・学名・科名・同定者・採集者・採集場所・年月日などを記入するようになっている)を置いて、その上に採集したキノコを並べる。同定(種の確定)がすんだものには和名が書き込まれていく=写真上。
「キノコハンター」と呼んでいいほど、人の何倍も採る人がいる。ほかにも熱心な人がたくさんいる。鑑定用のテーブルが2列半になったのには驚いた。
キノコ図鑑に載っていないような種を列挙すると――。ホオベニシロアシイグチ、ツギハギイグチ、クロチチダマシ、シイノモミウラモドキ、アオソメツチカブリ……。知識がアミタケ、チチタケ止まりの初心者には、どれがどれだかさっぱりわからない。和名の書き込みと現物をセットで撮影して初めて、キノコの名前と顔が一致する。図鑑に載っているのは氷山の一角にしかすぎないのだ。
そのなかで、誤食すれば幻覚症状が出る毒キノコのオオワライタケ=写真左=だけは、すぐ頭に入った。見た目はうまそうなキノコだ。「シュイボガサタケ(仮)」と「(仮)」のついたキノコもあった。これは、不明菌なので同定者がその場で仮の名を付けた、ということを意味する。
キノコに精通すればするほど分からないことが増えてくるのだそうだ。「分かる」と「分ける」は同根、分類するから知識が蓄積されていく。
これまでの観察会の経験からいえば、形状・色彩ですぐわかるもの、ルーペが必要なもの、顕微鏡で胞子を見ないと分からないものと、キノコは同定のレベルが何層にもなっている。それだけ奥が深いということだ。しかも、研究はDNAレベルでの解析というところまで進んでいる。
何年ぶりかで観察会に参加して、会員の識別レベルが上がっていることを感じた。それを裏付けるように、採集現場では「食べられる?食べられない?」という声があまり聞かれなかった。最初は「食欲」のために入会しても、年数を重ねるうちにキノコの美しさや不思議さに引かれて、「キノコ愛」が深まるのだろう。あらためてフィールドワークの面白さ・楽しさを実感した。
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おととい(9月9日)紹介した超珍菌のアカイカタケについて、いわきキノコ同好会会員であり、福島きのこの会会長でもある阿部武さん(石川町)から、きのう、手紙が届いた。
観察会を開いた8日の夜、阿部さんから電話が入って、「福島県内にも関東にも記録はない、非常に珍しいキノコ」だということは知った。
手紙は、吉見昭一著『おどるキノコ イカタケのひみつ』(岩崎書店、1983年)を紹介するものだった。同書にアカイカタケの発生地を記した地図が載る(静岡県までの太平洋側に多く、東日本は空白)。いわきでの採集は、「国内では14ケ所目ということになります」とあった。発行所からすると、児童図書のようだ。いわきの総合図書館に本がある。きょう、さっそく借りて来て読んでみよう。
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