2018年9月9日日曜日

キノコ観察会・上――超珍菌

 きのう(9月8日)、いわき市小川町の山中でキノコ観察会が開かれた。いわきキノコ同好会が主催した。20人ほどが参加した。
 原発震災後、朝晩続けていた散歩にドクターストップがかかったこともあって、観察会には足が遠のいた。

 去年(2017年)秋、同好会の女性会員が小川町の林道で、日本固有のトリュフ「ホンセイヨウショウロ」を発見した。イノシシがミミズを探して土を掘り返したらしいあとに転がっていた。その経緯が同好会の会報、7月10日付のいわき民報に載った。

その後、今年の観察会の案内はがきが届き、1回目は小川の山の雑木林で開かれることを知る。トリュフが発生した環境を知りたい――ドクターの言葉より好奇心がまさって、林道を行ったり来たりするだけ、写真を撮るだけと、自分に言い聞かせて参加した。

 これはその速報だ。アカイカタケという、スッポンタケ科のキノコを採取した。きのうまで存在を知らなかった。“超珍菌”だという。

 アカイカタケは、パッと見には16本の触手を持った赤い森のイソギンチャクだ。一口大のケーキのようにも見える。平たい頂部には、凝固しかかった血液、あるいはゼリーのような層がある。かぐと腐臭がする。これが、胞子の運搬役のハエを呼ぶ。

この森のイソギンチャクは林道へりの草むらに生えていた=写真上。女性の参加者が花だと思って、棒でチョンチョンやりかけたのを、「写真に撮るから」と制止した。かがんで見るとキノコだった。これまでにも観察会で風変わりなキノコを見てきたが、イソギンチャク様のものは初めてだ。

写真を撮ったあとは、昼食後の鑑定会に出すべく、根元から慎重に掘り取った。私がこの観察会で採取した唯一のキノコだ=写真左(右側のアカイカタケは老菌)。

 同好会の冨田武子会長に見せると、「イカタケは初めて」という。同好会の会員でもあり、初対面の阿部武福島きのこの会会長にも聞く。「県内ではどうですか」「帰って記録を見ないとわからないが、あっても1、2例では」

夜、阿部会長から電話が入る。冨田会長にも報告したという。「福島県内にも関東にも記録はない、非常に珍しいキノコ」だそうだ。いわき市内初、いや福島県内初ということであれば、トリュフほどではないにしても、愛菌家の世界ではビッグニュースになる。晩酌が急きょ、祝い酒に切り替わった。

アカイカタケは「南方系のキノコ」(阿部会長)でもある。それが南東北まで北上してきた、つまり地球温暖化の影響が菌界にも及んでいる、ということではないか。「ふくしまレッドリスト」には、記載はない(発見例がないので当然?)。が、西日本、たとえば京都では「絶滅寸前種」だという。

菌界は未知の領域だらけだ。普通の市民がこうした観察会で新種・珍種・貴種に出合う確率は高い。40の“キノコ目”が林道と、そばの林内をサーチしたからこその発見だった。

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