2018年9月20日木曜日

イノシシの箱罠

 いわきの里では今もイノシシと人間のバトルが続いている。先日、小川町の山中でキノコ観察会が開かれた。途中、林道にイノシシの箱罠が仕掛けられてあった=写真。初めて見た。
原発震災後は人の気配が消えた双葉郡、その西に連なる阿武隈高地の山里、あるいはいわき市でもイノシシ被害が増えた。肉からセシウムが検出され、イノシシを捕るハンターが減った。ハンターが減れば、イノシシは増える。増えれば農地や農作物が荒らされる。電気柵を張り巡らせた田んぼが年々増えていった。

 その対策として行政が報奨金を出してイノシシを捕獲する事業を始めた。わが生活圏内のうち、山の手の行政区では免許を持つ住人が罠猟を行っている。去年(2017年)は、警備会社が双葉郡内を主にイノシシ捕獲事業に参入することになり、市町村から仕事を受注するためにスタッフ7人が「罠猟」の免許を取ったことがニュースになった。

 いわき市のホームページで平成30(2018)年度のイノシシ捕獲報奨金制度を確かめた。細かいことは省略する。報奨金は①「鳥獣捕獲等許可」の場合、1頭当たり1万2000円(別途、市鳥獣対策協議会から成獣・最大8000円、幼獣・最大1000円を交付)②「狩猟」による捕獲の場合は成獣2万円、幼獣1万3000円――を支給する。対象頭数は2200頭だ。農作物や農地への被害を防ぐため、市では罠猟免許取得者に箱罠の無料貸し出しも行っている。

 もう5年前になる。双葉郡富岡町の旧警戒区域(居住制限区域=現在は解除)に入ったとたん、平地の住宅街で、ペットの犬か猫のような感じでイノシシ母子が道路を歩いていた。事態の深刻さに驚いた。

 わが家の近所でも2年前にイノシシが現れて大騒ぎになった。人家が密集する旧国道と国道6号(現国道399号)の間に少し畑が残っている。両方の道路を連絡する脇道に入ると、おまわりさんが「長い棒」(刺又=さすまた=だろう)を持って小さいイノシシを追いかけていたという。

 小川の山中で箱罠を見た瞬間、イノシシにからむ記憶がパッチワークになって脳内に現れた。同時に、檻の中のイノシシと対峙する狩猟者の心理も。相手は怒り、怖れ、興奮している猛者だ。成仏させるまでが一苦労だそうだ。殺生を合理化するのは余すことなく食べることだが、それができないもどかしさもあるらしい。

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