2018年9月28日金曜日

庭を舞うヤマトシジミ

この長雨には生きものも難儀しているのではないか。雨上がり、庭へ出て草木を眺めていたら、紙きれみたいなチョウが飛んでいた。草には水玉がびっしりついている。止まろうとするとぬれている。少し動いて止まろうとすると、そこもぬれている。翅を休めようにも休められないといった感じで、低くひらひらと飛び続けていた。ヤマトシジミだった。
ヤマトシジミは本州以南に分布する。ネット情報によれば、最も普通に見られるチョウで、春から秋にかけて5~6回は発生する。夏は1カ月くらいで交尾~産卵~孵化(幼虫)~蛹化~羽化(成虫)が繰り返される。

すると今、庭を飛んでいる成虫は、親が8月下旬に交尾・産卵し、その親も7月下旬に産み落とされた卵からかえったもの、ということになる。7月29日朝に庭の草の上で交尾中のヤマトシジミを撮影した=写真。同じ血が流れているとしたら、今の成虫はこの7月の成虫の“孫”だ。

交尾している写真を撮り、それを拡大してスケッチし、図鑑に照らし合わせてヤマトシジミとわかった。翅裏は雌雄ほぼ同じで、灰褐色の地に円形または「く」の字の黒色紋様が並ぶというが、円形はハート形だったりする。識別が難しいときにはとにかく模写する、つまり細部までよく観察することだ。

翅が、赤みがかっているのが雌というから、写真では左がそれらしい。幼虫の食草はカタバミ。目立つほどではないが、庭に少し生えている。

デジタル写真の面白さは「針小」を「棒大」にできることだろう。スケッチとは別の意味で細部がよくわかる。触角と脚先には、白地に黒い縞模様が入っている。肉眼ではそこまでは識別できない。

ときには、庭を舞う小さなチョウを見て、「おまえのジイサンとバアサンを知ってるよ」なんて話しかけてみる。「魚だって人間なんだ」。草野心平の詩ではないが、「チョウだって人間」とつぶやきながら。――けさは久しぶりの青空。

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