2018年9月13日木曜日

シリア難民俳優がいわきへ

 いわき市南部の知人から電話が入ったのは、7月の梅雨明け前後だったか。「シリア難民俳優のいわき公演の話があるんですが」「シリア難民も原発難民も同じ、やるべし」というわけで、実行委員会に加わった。
難民俳優は双子のマラス兄弟(35歳)。シリアで生まれ、演劇と脚本を学んだ。日本で原発震災がおきた2011年、内戦化したシリアから脱出し、ベイルート(レバノン)、カイロ(エジプト)、パリ(フランス)を経て、今はパリの東北部・ランスに住む。

文楽の人形遣い・勘緑(旧吉田勘緑)さんの主宰する木偶舎が今年(2018年)2月、ヨーロッパツアーを行った。ランスの劇場で、3人で人形を動かす文楽のワークショップを実施したとき、マラス兄弟も参加した。最終日、「この地球に生まれて」を上演すると、兄弟は涙を浮かべて胸中を打ち明けた。「音楽をシリアのものにすれば、この演目は今のダマスカスだ。我々は同じく、子供が死んでいくのを何度も見た」

勘緑さんは兄弟に深く感動して思った。「生まれた場所を追放され、家族バラバラに難民となりながらも、(略)平和に向けた表現活動を続けている(略)。いつか一緒に舞台に立ちたい」。帰国後、生死にかかわる手術をした勘緑さんは、麻酔から覚めるとこの思いを実現するために動き出した。(以上、チラシから)

勘緑さんは2009年、勿来の関公園内にある吹風殿で人形浄瑠璃の公演を行った。知人はそのとき、勘緑さんと知り合った。その後、東日本大震災がおきると、勘緑さんは弟子たちとともに、ボランティアとして勿来を訪れ、人形を遣ったり、泥かきをしたりした。そのつながりから文楽とマラス兄弟のいわき公演が決まった。

「勘緑 秋のツアー2018」の一環として、10月2日(火)午後7時から、平・三町目のアートスペースもりたか屋で「演劇&トーク&人形浄瑠璃」が行われる。

演目は①「二人の難民」マラス兄弟=シリアから戦火を逃れてパリに着いた2人の難民の生活②「ボーン・オン・ジス・プラネット(この地球に生まれて)」=沖縄戦をモチーフにした木偶舎の同名作品にマラス兄弟が共演③トーク「シリアの双子と知り合って」=知っておこう難民のこと戦場のこと――の三つ。

チラシの余白に「だれもが“難民”になり得る時代」と題する小文を書いた。「被災者、難民、避難者――。言葉の定義はどうあれ、家を追われ、あるいは失い、ふるさとを追われて、よその地で生きるしかなくなった、という点では共通する。原発事故もまた、家族を、コミュニティを分断した。難民と受け入れコミュニティとのあつれきも生んだ」。私たちはそうしてこの7年余、多くの経験と知見を得た。その延長線上に今度の公演がある。
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チケットは前売り1500円(学生1000円)だが、定員は50人と限りがある。問い合わせは電話0246・77・1590か090・8253・6460(室井)まで。

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