刺激になったのは、いわき地域学會の8月の市民講座。事務局次長の渡辺剛広幹事が「地図の見方」と題して、ネット(主にスマホ)で利用できる地理院地図のほか、地理情報システムや地図アプリなどについて解説した。地図もまた情報の宝庫だと知る。
「またかよ」と言われそうで恐縮なのだが、吉野せいの作品集『洟をたらした神』は、いわき市好間町北好間、菊竹山腹の開拓集落が主な舞台だ。
一帯の地質や土壌について、せいは次のように記している。「土は粘土まじりのごろごろです。掘り散らかされてある石も取り集めねばなりません。藪のうちは解らなかったが、平地にして見ると乾地湿地の無様な高低がはげしく目立ちます」(「春」)「親芋からにょきにょきと分かれてのび出した子芋の間へ、じっくり食い込んだ粘土質の重い土」「目の前に広い赭土(あかつち)の畑が沙漠を見るように無言で続いている」(「赭い畑)
科学的・客観的にはどうか。福島県農地計画課が編集・発行した『土地分類基本調査 平』(1994年)の地図に当たる。すると、菊竹山一帯は①地形分類=中位砂礫段丘②表層地質=礫・砂・泥(中位段丘堆積物)③傾斜区分=傾斜15度以上20度未満④土壌=乾性褐色森林土壌(菊竹山頂周辺)/適潤性褐色森林土壌(山腹南東の西側)/黄色土壌(細粒黄色土=吉野家の周辺)⑤土地利用現況=集落と広葉樹林――とあった。
詳しい説明は避けるが、菊竹の段丘は13万年前に隆起によってできた、菊竹山腹の表層地質には粘土が含まれている、菊竹は緩傾斜に近い、地味に乏しく、生産性が低いため、耕地には不向き、ということがわかった。吉野夫妻は長年、「やせ土」と闘ってきたのだ。作品のなかに描かれた土壌や地質は、県発行のこの地図からも裏付けられる。
では、わがふるさとの「アカジャリ(赤砂利)」はどうか。図書館から同じシリーズの『常葉』編を借りてチェックした。
アカジャリは南東の大滝根山を水源とする大滝根川が北西に流れて来て、田村市常葉町内でΩ状に曲流=写真(グーグルアース)=した下流(写真でいうと左側)の屈曲部にある。右岸は水田。左岸は、10メートル以上はあろうかという砂利の断崖だ。そこは好間・菊竹と同じ中位砂礫段丘で、土は細粒褐色森林土壌・粘質だという。「アカジャリ」といわれるワケがやっとわかった。「断層」ではなく、段丘であることも。
かつて、小学生は夏休みにこのアカジャリで水浴びをした。先日、中学校の同級会が開かれ、町内の小学校出身者が「アカジャリと(そこにあった)『坊主石』は、今どうなってる?」と町在住者に聞いていたが、答えはあいまいだった。すでに暮らしから遠い存在になっているのだろう。
さて、また別の話に移る。あした(11月11日)は「地図の見方』の実践編、地域学會の巡検がいわき駅周辺で行われる。
磐城平城が駅裏の物見ケ岡にあった。スマホを持っている人は地図アプリを利用し、持っていない人でもそれを見せてもらいながら、平城への登城ルートや戊辰戦争の様子などを現地で体感できる。あした午前9時、いわき駅北口集合で、参加費無料で実施する。興味のある方はぜひ一緒に“登城”しませんか。
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