昭和4(1929)年8月、ドイツの飛行船「ツェッペリン伯号」がシベリアから東北の太平洋岸に沿って南下し、霞ケ浦に着陸した。いわきでは当時・平町の東端、神谷村の上空を小名浜方面へ向かって山沿いに飛行した――と同紙にある、という。
いわきの作家吉野せいの作品集『洟をたらした神』の注釈づくりをしている。作品の一つ「ダムのかげ」は炭鉱の仕組みや暮らしを理解しないと注解ができない。炭鉱のことを知りたくて、逐次刊行物の「常磐炭田史研究」を読んでいたら、第5号で旧知の故・郷武夫さんの論考「いわきの空を飛行船が飛んだころ――昭和4(1929年)8月――」に出合った。図書館のホームページにはない東北日日新聞の記事を引用していた。
炭鉱とは直接、関係はない。が、注釈づくりをしていて面白いのは、どんどん横道にそれて、まったく思いもよらなかったところへ行きつくことだ。飛行船を初めて見たいわきの人間の驚き、喜びを想像するだけでも、その時代の『洟をたらし神』の世界のエキスにはなる。
ホームページだから、11月1日午前零時にリニューアルされるのではないか。そう思っていたが、違った。朝起きてチェックするものの、トップページは前のまま。午前10時、図書館の開館時間に合わせてリニューアルされた=写真上。東北日日新聞もあった。すぐ飛行船の記事(昭和4年8月20日付=19日夕刊)=写真下=をプリントアウトした。起きてからの4時間が長かった。これを“古新聞シリーズ”8としておこう。
新しくデジタル化された地域新聞は東北日日をはじめ、磐城調査新報・磐城立憲新報・平新聞(福總新聞)・磐城中正新聞など18紙で、現在唯一の地域紙いわき民報とはライバル関係にあった戦後の常磐毎日新聞も読めるようになった。
いわき総合図書館が収蔵する地域新聞はかなりの数にのぼる。いわきの近代史を調べるうえでは欠かせない情報の宝庫だ。諸橋元三郎の私設図書館「三猿文庫」の資料が市に寄託されたことが大きい。これだけの地域新聞をデジタル化した図書館は、ほかにないのではないか――8年近く「地域資料のページ」を利用し、恩恵にあずかっている身としては、いろんな感慨がよぎる。
ここしばらくは当てもなく、電子新聞の森に分け入り、これまで「未読」だったエリアを巡り続けようと思う。
ここしばらくは当てもなく、電子新聞の森に分け入り、これまで「未読」だったエリアを巡り続けようと思う。
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