「なんだ、これは!」。最初見たときには仰天しながら通り過ぎた。2回目は車を止めて写真を撮った。強烈な色彩とデザインだ=写真。
日曜日は夏井川渓谷の隠居で過ごす。そこへの行き帰り、JR磐越東線の江田駅前を通る。隠居からの帰りに、その「異変」を知った。
牛小川から椚平を過ぎ、江田の集落に入ると、県道小野四倉線の左手上方に江田駅の露天のホームが見える。右手は民家と水田。その先に、夏井川に沿ってキャンプ場と駐車場がある。
民家とキャンプ場入り口の空きスペースに、黄、黒、赤で染まった物置が「出現」した。その前には、やはり色を塗られたドラム缶がある。
そばにはもう一つ、いかにも手作りと思われる縦長の物置がおかれ、中に何束か薪(まき)が重ねられてあった。
こちらの物置は黒く塗られ、壁に白いペンキで「無人販売」と書かれている。その文字から氷柱のようにペンキが流れ落ちている。
渓谷の小集落から見ると、私ら夫婦は「日曜定来者」にすぎない。その人間が2月11日の日曜日に通ったときには、これらはなかった。
それから1週間後の日曜日、物置がセットで置かれていた。メーンの物置の壁には黒をバックに、赤く燃え上がる炎が描かれている。その炎は手前のドラム缶から燃えているように配されている。要は「夜の焚き火」をイメージした「オブジェ」であり、「壁画」だろう。
ほかには「薪」「皮・無料」「一束300円、500円、400円」の文字。値段が「300円、400円、500円」と順を追うのではなく、「500円」が「400円」の先にきているところがおもしろい。
なぜ、そこに、薪の無人販売所が? 渓谷の住民は、薪が必要な場合は自分で調達するはずだ。では、だれのために?
江田駅の裏山を背戸峨廊(セドガロ=夏井川支流江田川)が流れる。前はそちらでキャンプや芋煮会が行われた。
山火事の心配がある、川で洗いものをするので水が汚れる――という状況になって、景勝の入り口に代替のキャンプ場が設けられた。
使用料がかからない。予約をする必要がない、先着順で使える、という手軽さが受けて、コロナ禍が起きると、週末には車が何台も止まるようになった。例年、利用客が途絶える師走も、日曜日には駐車場が満パイになった。
コロナ禍で「3密」を避けるため、屋外でレジャーを楽しむ人が増えた。しかも、キャンプには夜の焚き火が付き物だ。
それを思い出した。ネットで探ると、図星だった。このキャンプ場で焚き火台に薪をくべ、明かりと暖をとるキャンパーがいた。それだけではない。軽トラが一束300円と500円の薪を売りに来る、ともあった。
そういうことか――。やっと、薪の無人販売所ができたわけがわかった。野営するキャンパーにとってはやはり、夜の焚き火=キャンプファイヤーが楽しみにちがいない。新しい需要と供給の発生。それが薪の無人販売所になった、ということなのだろう。
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