2024年2月21日水曜日

アカハラ、といっても鳥の方

                      
 アッシー君をして、ひとり車で戻ったところ、奥の家の駐車スペースにツグミ大の鳥が現れた。ほんの一瞬動きを止めたあと、地面をチョンチョンやりながら隣家の庭に消えた。

 ツグミは胸が黒っぽくて腹が白い。この鳥は、胸から脇が黄橙色だ。あのとき、あそこで、そしてあそこでも……。震災前、冬場に何度か見かけたことがある。その記憶が次々によみがえる。

 アカハラ。鳥のアカハラで、アカデミックハラスメントのアカハラではない。一昔前と違って、今は「アカハラ」で検索すると、ハラスメントの方が先に出てくる。

 アカハラは、本州中部以北の山地や低山地、北海道では平地の、落葉広葉樹林の林縁や下生えのある林で繁殖する、と図鑑にある。

 夏は明るい開けた場所を好む。ところが冬は平地に下り、薄暗い林の中を好むそうだ。薄暗い林とは、ツバキやマツなどの常緑樹が生えているところだろう。かつて目撃した場所もそうだった。

 車のフロントガラス越しに写真を、と思っているうちに姿を消した。代わりに、手持ちの『野鳥図鑑』(日本鳥獣保護連盟、1981年第2刷)のイラストを拝借する=写真。

 ツグミには「〇」印が、アカハラには「〇」印のほかに数字と川名が書き込まれている。「〇」印はウオッチングずみで、アカハラは1984年4月20日午後4時29分、夏井川で目撃したことがわかる。もう40年前のことだ。

 海岸の防風林のなかにある飲食店の窓越しにアカハラを見たときの記録がブログに残っていた。整理して再掲する。

 ――正月2日目。「箱根駅伝」を伝えるテレビにかじりつき、いわき出身の柏原竜二君の力走を見たあと、新舞子海岸の林の中にある飲食店へ出かけた。

 どういうわけか、カミサンが車に常備している双眼鏡をバッグに入れた。私もつられてカメラを手にした。

店は、大きな窓ガラスがはめられていて、林内を見渡せる。飲み物を頼んだあと、なにげなく窓の外を見ていたら、林床に鳥がうごめいていた。

キジバトだった。近くにアカハラもいる。アカハラは盛んにくちばしで落ち葉を散らしていた。虫でも探しているのか。

そのうち,目のぱちくりしたヒタキ系の鳥が現れた。双眼鏡をのぞくと、ルリビタキの雌だった。撮影の方はしかし、被写体が小さすぎて全部だめだった。

松を中心に木々が散在している。常緑のトベラがある。名前のわからない落葉樹もある。少し間伐したらしい。落ち葉かきもしているらしい。

アカハラが散らかしていたのは落ち葉の山だった。そんな落ち葉の山があちこちにある。虫たちには格好のベッドだろう。

自然の状態だと、こうは温かい風景にはならない。窓ガラスをはさんで、内側では人間が飲食し、外側では鳥たちが食事をしている。偶然、知った探鳥スポットだ――。

そこを訪ねたのは震災の2カ月前だった。ストリートビューで見ると、2019年あたりから入り口に草が生え始めていた。今はたぶんやぶ化している。

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