2024年2月29日木曜日

栽培キノコ

        
 東日本大震災に伴う原発事故以来、いわき市内では野生キノコの摂取・出荷制限が続く。その代用の意味もあるのだが、私は毎日、朝の味噌汁に栽培ナメコを入れてもらう。

 1週間、あるいは10日にいっぺんくらいのペースでスーパーへ買い物に行く。アッシー君、そして買い物カート担当だ。店内を巡りながら、ナメコだけは私が買い物かごに入れる。

 たまにカミサンがエリンギやマイタケを買う。炒め物やてんぷらになって出てくる。栽培キノコという点ではナメコと同じだが、「マイタケはやはり天然ものでなくちゃ」などと、少し距離をおいていた。それがどうだ、食べ続けているうちにだんだんなじんできた。

 日曜日には、夏井川渓谷にある隠居で過ごす。原発事故が起きるまでは毎回、キノコを目的に対岸の森を巡った。

 渓谷は野生キノコの宝庫だ。しかし、摂取制限がかかっている。森を巡ってもおもしろくない。

 というわけで、今は除染が済んだ隠居の庭だけで、キノコを観察している。食菌はありがたくちょうだいする。

 春のアミガサタケ(シダレザクラの樹下に発生)、秋のアカモミタケ(若いモミの樹下に発生)、晩秋のヒラタケ(敷地内の立ち枯れ木に発生)……。

 季節ごとに野生キノコと対面してはいるが、チチタケやウラベニホテイシメジといった「愛菌」には、すっかりごぶさただ。

欲求不満が募る。そこで毎朝、栽培ナメコで、これら野生キノコを食べた気になる。なんといっても、野生キノコが一番。それに変わりはないのだが、栽培キノコもなじめば、また食べたくなる。

 なかでもエリンギは食感、食味がさわやかというか、くせがない。スーパーへ行くと、ナメコだけでなく、エリンギも買いたくなってきた。

 エリンギの原産地は、イタリア・フランスなどの地中海性気候の地域だけではない。ロシア南部、中央アジアなどのステップ気候の地域でも採れるという。

おもしろいことに、イタリアなどでは開いた傘が好まれる。しかし、日本の栽培エリンギは柄が太い。

肉質は緻密で弾力に富み、歯ごたえがある。食感はマツタケや加熱したアワビ似るとか。傘より柄。日本ではなぜ柄が好まれるのだろう。

先日は晩酌のつまみに、小瓶に入ったお福分けの「焼ネギなめたけ」と、エリンギの炒め物が出た=写真。

「焼ネギ」は焼いた下仁田ネギ、「なめたけ」は日光を当てずに栽培したエノキタケ。それらに醤油や砂糖、もろみ、唐辛子などを調味したもので、本来はご飯のおかずだという。

エリンギの炒め物に合わせて、「焼ネギなめたけ」を、それこそ少しずつなめるように口に入れたら、いい酒のつまみになった。

そう、これからはナメコ以外の栽培キノコも食べるようにしよう。ナメコだけではやはり口が寂しい。

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