2024年2月5日月曜日

早春の土の味

        
 年が明けて最初の月が終わる、このまま食べないでいるのは「怠け者」と同じ――。というわけで、1月28日の日曜日、夏井川渓谷にある隠居の庭でフキノトウを2個摘んだ=写真。

 広い庭の一角にフキが根づいている。栽培か自生かはよくわからない。義父が休耕畑を借りて土盛りし、上下二段の庭にしてから半世紀以上がたつ。その庭の一角だけ、毎年、フキの葉で覆われる。

 義父に代わって隠居の管理人を引き受けたのは、阪神・淡路大震災が起きた平成7(1995)年の初夏。29年前のことだ。

 以来、師走になると宮沢賢治よろしく腰に手を回し、歩いては立ち止まりながら地面に目を凝らす。

 摘むか摘まないかは、手の親指大かどうかが「目安」になる。師走のうちにそこまで大きくなっていれば、元旦(元日の朝のことで、元日一日のことではない)の雑煮に、みじんにして散らす。新年に合わせて早春の土の味を楽しむ。

 この冬はどうか。暮れのうちにフキノトウが地面から頭をのぞかせているのを確かめた。が、摘むほどの大きさにはなっていない。

 寒さは? 一時的に寒くなることはあったが、水道が凍るほどではなかった。「なかった」と書くのは、1月下旬の極寒期を経て、節分と立春(2月4日)を過ぎたからだ。

 ただし、太平洋側のいわき地方はそのあと、雪に見舞われることがある。きょう(2月5日)から翌日にかけてが、そうなりそうだ。春先、南岸低気圧がいわきに湿った雪をもたらす。

隠居の畑では三春ネギを栽培している。この冬は畑の土が凍ってもほんの少しで、この12月、1月と、ネギのうねにスコップを当てるとすぐ入っていった。

暖冬である。暖かいとフキノトウもふくらみやすいはず……。それはしかし、単なる思い込みにすぎなかったようだ。

昨夏の猛烈な暑さが影響しているのかどうか。あるいは、なにか別の理由があるのかどうか。私にはよくわからない。が、とにかく生育がゆっくりしている。

元旦の雑煮には間に合わなかったが、1月のうちには……。7日、14日の日曜日、隠居へ行くたびにフキノトウをチェックした。

ここにも、あそこにもと、そのたびに数は増えるのだが、どうも摘む気にはなれない。親指大にまでなかなか肥大しないのだ。

21日は嵐で行くのをよした。結局、28日に2個を摘み、翌29日と30日の朝、カミサンがみじんにして味噌汁に散らした。ひとまず立春前に、いつものように早春の土の味を楽しんだ。

過去のブログを確かめると、2月も後半になればフキノトウがいっぱい頭を出す。カミサンが行くたびに摘んで、てんぷらにしたり、ふきみそにしたりした。

この年齢になると、時代には遅れても季節には遅れたくない――そんな思いが強い。遅れる感覚こそが冒頭の「怠け者」意識につながる。その意味では早春の土の味を確かめて安堵感が広がった。

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