2024年2月26日月曜日

春を宿す

                               
   日曜日になると夏井川渓谷の隠居へ出かけ、庭の畑と向き合う。生ごみを埋める、三春ネギと辛み大根を掘り取る。それが年明け後の「仕事」だった。

この冬、畑の土がカチンカチンに凍ることはなかった。厳冬だと、土は厚く凍ってスコップが入らない。それで生ごみは堆肥枠の中に入れて落ち葉などをかぶせておく。

ところが近年はそういうことがなくなった。土が凍らないわけではない。凍ってもスコップに足をかけて押し込むと、先端が凍土の下に届く。そのままスコップをグイッと倒せば、凍土が割れる。

この時期、ネギの葉の先端は枯れて白っぽくなっている。辛み大根の葉もだいぶ枯れた。いつもの冬の姿である。

いや、冬に限らない。ネギも草も木々も、1年を通じていろんな表情を見せる。その変化をもたらすのはむろん、V字谷固有の自然だ。

今は厳寒期から春に転じたなかでの動きが、そこかしこに見られる。梅前線が渓谷(牛小川)に到着した。アセビも開花した。ネギも春の胎動が始まった。

先の日曜日(2月18日)に掘り取った三春ネギは、枯れた外皮をむくと古い葉の間に、小さくとがった若い葉が形成されていた。

1週間後にうねのネギを見ると、若い葉がかなり伸びていた。最初は花茎かと思ったが、そうではない。花茎なら頭に花球をいただいている。それが現れるのはもう少したってからだろう。

花茎も葉の間にできる。ウメやサクラと同じく、ネギもまた、冬の寒暖を経験して春がきたことを察知(あるいは勘違い)し、子孫を残そうとする。

辛み大根もまた枯れた葉の中心から花芽を形成し、4月も中旬になると淡い紫色の花を咲かせるようになる。

ネギはまだまだうねにある。10本くらいは採種用に残しておくにしても、あと20本くらいは採って食べられる。

というわけで、この冬最後の三春ネギと辛み大根を掘り取った=写真。あとは種ができるのを待つだけだ。

前に田村市からネギ苗をもらってきたことがある。春に植え付けたら、いきなり苗に花茎ができた。気象次第でそうなることがあるらしい。

幼いうちに摘めば、問題はない。秋に太くてやわらかいネギができる。摘んだ花茎は食べることにした。ちょうどサンショウの木の芽が出始めたときだ。

「ねぎ味噌」にすると、未熟な花茎だったのでネギの香りはゼロ。サンショウも香りを楽しむには量が少なかった。

同じころ、辛み大根もつぼみができた。これも収穫した。こちらは晩酌のつまみ用で、つくっておいたさんしょう味噌をからめて食べた。

舌先がほのかにヒリヒリした。さわやかな辛みだった。うまかったので、今年(2024年)もこの食べ方を試してみようと思う。

さて、苗床のネギの様子はどうか。寒さにかじかんでいたネギ苗もまた、3月に入るとシャキッとして、万年筆のカートリッジくらいには太くなる。

これが鉛筆くらいの太さになれば、定植できる。そのころには、そこかしこに春が充満している。

0 件のコメント: