図書館で面白そうだからと、借りてきた本ではない。カミサンが移動図書館から借りた本の中にあった。
今井むつみ・秋田喜美著『言語の本質――ことばはどう生まれ、進化したか』(中公新書、2023年)=写真。
難しそうだが、とりあえず読んでみることにした。「言語の本質を問うことは、人間とは何かを考えることでもある」。それはそうだ。
で、その鍵は? 一つは「オノマトペ」、もう一つは「アブダクション(仮説形成)推論」だという。
ほぼ毎日、ブログを書いている身としては、文章のモトとなる言語の本質を知っておきたい、という気持ちがある。それをわかりやすく説いているのだろうと期待したのだが、これがなかなか難しい。
コンピューターが出現し、AI(人工知能)が登場してからは、新たな視点が生まれた。そのひとつが「記号接地問題」であり、「アブダクション推論」というものらしい。
古い人間には、「演繹推論」や「帰納推論」は何となく想像できるが、「アブダクション推論」というのはまずイメージが浮かばない。この際、記号接地とかアブダクションとかはわきに置いて、オノマトペに絞って書く。
オノマトペは、欧米では擬音語に限定して考える人が多いが、日本の研究者は擬音語だけでなく、擬態語、擬情語も含む包括的な用語として用いるという。
それで真っ先に思い浮かんだのが、詩人の草野心平だ。令和3(2021)年春には、いわき市立草野心平記念文学館で企画展「草野心平のオノマトペ 生きてゆく擬音」が開かれた。
なかでも有名なのが「カエル語」を写した詩だ。「誕生祭」から任意に二つほどを。「りーりー りりる りりる りふっふっふ」「ぎゃわろッぎゃわろッぎゃわろろろりッ」
私たちも日常的にオノマトペを使っている。「ドキドキした」「ハラハラした」。幼児語も含めると、「ワンワン」「ニャーニャー」「ザラザラ」「ヌルヌル」など。
朝ドラがらみでいえば、「東京ブギウギ」の歌詞がそうだろう。心が「ズキズキ」「ウキウキ」「ワクワク」。
身近すぎて気にも留めなかったが、「オノマトペは特殊なことばのように見えて、実は言語の普遍的、本質的な特徴を持つ、いわば言語のミニワールド」(はじめに)なのだとか。
さらには、「オノマトペは子どもを言語の世界に引きつける。それによって子どもはことばに興味を持ち、もっと聞きたい、話したい、ことばを使いたいと思う。(略)オノマトペに親しむことで子どもは言語のさまざまな性質を学ぶことができる」(第4章まとめ)。
身体から発しながら身体を離れた抽象的な記号の体系へと進化・成長する「つなぎ」の役目も果たすのではないかという。とりあえず、オノマトペをより深く知るきっかけくらいにはしないと。
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