2024年3月11日月曜日

列車が竹と衝突

        
 列車が衝突したのは、イノシシではなく、倒れかかっていた竹だった。3月8日付のいわき民報にJR磐越東線の事故が載っていた=写真。

 磐東線の列車の遅れといえば、気象以外ではイノシシがぶつかった、という事故が多い。場所としては夏井川渓谷あたりだ。

ところが、8日は違っていた。朝の8時55分ごろ、小川郷―江田駅間で、いわき発郡山行きの下り列車が、線路側に倒れかかっていた竹に衝突した。

列車は一時停止したあとに運転を再開し、倒竹は午前10時38分までに伐採されたという。

県紙の記事も参考にすると、この日、福島県内では南岸低気圧の影響で雪が降り、在来線でも運休や遅れが相次いだ。常磐線では各地で雪による倒竹が発生した。

夏井川渓谷でも積雪が見られた時間帯だ。時間からして郡山行きの2番列車だろう。ただし、下りの2番列車は小川郷発8時41分、江田発8時51分だから、少し遅れていたようだ。

小川郷―江田駅間のどこかということになるが、まず思い浮かぶのが草野心平の詩「故郷の入口」に出てくる夏井川沿いの竹林だ。

こちらは赤井―小川郷駅間だから、今度の倒竹とは関係がない。が、心平にとって「長い竹藪」は平駅(現いわき駅)から磐東線を利用して故郷の小川へ帰ったときの「原風景」でもある。

平駅から赤井駅へ、さらに小川郷駅へと列車が進む。赤井と小川の境には切り通しがある。

そのあと右手の視界が開け、道路と夏井川が線路に並走する。川岸には竹林が続く。「いつもと同じだ。/長い竹藪。/いつもと同じだ。」

令和元年東日本台風では、平の平窪地区を中心に、夏井川流域で大きな被害が出た。その後、復旧・強じん化事業が進められ、現在も伐木、土砂除去などが行われている。心平の詩に出てくる「長い竹藪」も、それでかなり伐採された。

さて、倒竹はどこで発生したのか。グーグルアースの衛星画像とストリートビューを組みわせて、それらしいところを探る。

国道399号が県道小野四倉線をまたぐあたりに竹林がある。ほかにも何カ所かで樹木に混じって竹が生えている。

平地から渓谷へと入っていく小川郷―江田駅間は、その意味では緑が両側、あるいは片側から線路に迫ってくる。

前に北海道出身の詩人左川ちか(1911~36年)について書いた。汽車通学をしていたころを回想する作品がある。それも思い出した。

「少女の頃の汽車通学。崖と崖の草叢や森林地帯が車内に入つて来る。両側の硝子に燃えうつる明緑の焔で私たちの眼球と手が真青に染まる」(「暗い夏」)

3月10日の日曜日、夏井川渓谷の隠居へ向かいながら、磐東線沿いの竹林をチェックした。竹の最前列が伐採されたところがあった。

ま、場所はどこであれ、春の南岸低気圧が通過するときには、磐東線はイノシシだけでなく、雪による倒竹にも注意しないといけないことがわかった。

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