2024年3月12日火曜日

渓谷の雪

                      
 きのう(3月11日)の続き――。夏井川渓谷に住む友人が金曜日(3月8日)の朝、フェイスブックに雪の写真をアップしていた。わが隠居の手前の小集落に家がある。

 無事に冬をやり過ごしたと思ったら、春の雪だ。日曜日には隠居へ行くが、道路はどうだろう。雪が残っているようだと、出かけるのは控えた方がよさそうだ。

 とはいえ、平地の市街地では雨だった。ヤマとマチの違いだが、渓谷はヤマといっても階段の踊り場、つまりマチとヤマの中間のようなところだ。標高は200メートルほど。その先のヤマになると、積雪は格段に多くなる。

 毎週金曜日、川内村の「獏原人村」から卵が届く。8日の朝、スマホに連絡が入った。「今日は大雪で出られないので(卵の配達を)を休みます」「電波が悪くて通話できないのでメールで失礼します」

 渓谷より標高の高い山里は、川内からの情報でもわかるように、かなり雪が積もったのではないか。

 平地の雨は、午後にはやんだ。翌9日は午前中、小川町のいわき市立草野心平記念文学館で集まりがあった。

 朝、阿武隈の山並みを見ると、それほど白くはない。文学館までの山道もほとんど日陰はない。

 行けるところまで行こう。道路に雪が残っていたら、そこで連絡をして引き返す。そう決めて出かけたが、雪は道路にも、周りの林床にもなかった。

 そして、日曜日。隠居へ出かけるとして、渓谷を縫う県道小野四倉線には、要注意ポイントが3~4カ所ある。

平地から段丘に移り、さらに渓谷へと進むあたり、南側に杉林があって日がささない「地獄坂」が待つ。ここが最初のポイントだ。さいわい雪はなかった。

次のポイントは江田の手前のS字カーブ。隠居へ通い始めて29年、あまり日がささない場所でもあり、何度か圧雪状態を経験している。

当時は4輪駆動、タイヤは全天候型だった。道端には滑り止めの砂箱がある。というわけで、そのころはゆっくりだが、なんとか通り抜けることができた。

3月に入るとすぐ、全天候型タイヤを理由に、隠居の奥、川前の「いこいの里鬼ケ城」へ出かけたことがある。

山里だから一面、銀世界だ。帰りにゆるい下り坂のカーブで車が滑り、側溝にタイヤがはまってしまった。

JAFを呼ぼうと近所の農家へ行くと、主人がトラクターを出してタイヤを引っ張り上げてくれた。

3月のヤマの雪は怖い。それを体験しているので、ヤマに雪が降ったあとはいつも引き返す覚悟で渓谷へ向かう。

地獄坂は無事だったから、その先も……。S字カーブにも雪はなかった。あとは籠場の滝の前後のカーブだが、ここも道路は乾いていた。

降らなかったわけではない。すぐ消えたのだ。その証拠に、籠場の滝から隠居までの対岸、北向きの森は、林床に雪が残っていた=写真。

隠居の畑には、もう白いものはなかった。融けきる寸前の雪の残骸がほんの少しあったが、色はすでに透明だった。

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