2024年3月25日月曜日

牛小川にもシュロがあった

                      
   年度末である。夏井川渓谷にある小集落の区長さんから連絡がきて、3月半ばの土曜日午後、寄り合いに参加した。

 平地の行政区と違って、渓谷の小集落は10世帯に満たない。寄り合いは全戸参加だ。何を決めるにも「多数決」ではなく、話し合いを積み重ねて「全会一致」に持っていく。直接民主主義の見本といってもいい。

 今度も率直な意見交換が行われた。それがあるからこそ、あとに禍根を残さない。議論を尽くすやり方は、生活の知恵だろう。

 ちょうど1年前、同じように寄り合いがあった。会場は、Kさんが納屋を改装した「談話室」だ。そのとき、杉の木を切ったら「花見山」にしようというアイデアが披露された。

談話室」へ行くには、小さな棚田のそばを通る。その左手奥、山からの稜線が尽きるあたりに杉が植わってある。寄り合いからほどなく、そこで伐採作業が始まり、4月の初旬には杉の木が消えた。

稜線の陰には夏井川の支流・中川をはさんで田畑と家がある。杉林はいわば、夏井川を望む家々と、中川を望む家々を分ける「衝立」のような役割を果たしていた。

これがいったん更地になった。そこを、今度はヤマザクラなどを植えて花見山にしよう、というわけだ。

1年前は全く気づかなかったが、伐採された跡地にシュロが1本、逆光の中でポツンと立っていた=写真。

あるとき、温暖化によるシュロの北上に気づいて、わが生活圏ではどうなっているか、調べたことがある。

わが家から渓谷の隠居までの道すがら、車を走らせながら、助手席のカミサンに頼んで、どこにシュロがあるかを頭に入れた。そのときのブログを要約・再掲する。

――1月28日の日曜日、わが家から夏井川渓谷の牛小川までの道沿いを調べた。渓谷の入り口、小川町上小川字高崎までは、沿道の家の庭に、家の近くの空き地やヤブにと、けっこうな頻度でシュロが見られた。

いちいち地図に場所と本数を記録するようなことはしない。要は、夏井川流域でも川筋に近い平地から渓谷までの「シュロマップ」を、ざっくり頭に入れておく。

牛小川は小川町の西のはずれだ。その先は川前町になる。わが隠居までのウォッチングでは、JR磐越東線江田駅の下、紅葉時期になるとテント村ができる空き地の林にシュロが生えていた。

これはたぶん生え方からして自生にちがいない。ここまででざっと70カ所、本数では80本前後だろうか。

江田の手前で、ガードレール越しにシュロの葉が見えたから、自生のシュロは夏井川渓谷にまで分布しているとみてよさそうだ――。

牛小川のシュロは、植物に詳しいもう一人のKさんによれば、鳥が種を運んで来た。それが、あそこにも、ここにも。

シュロは幹の繊維が燃えやすいので、家の近くには植えない、と「談話室」のKさんが応じた。

ネットにも「燃えやすい着火物」とあった。温暖化ばかりか、防火の面からも要注意の植物だ、と知る。

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