日曜日に夏井川渓谷の隠居へ行く途中、小川町の三島地内を通る。国道399号に沿って夏井川が流れている。
正確には、道路側(左岸)が上平、対岸(右岸)が三島だ。ハクチョウの越冬地でもある。
ちなみに、大字としての上平は「うわだいら」と言い、それに続く字名の上平は「かみだいら」と読む。字名としてはほかに光平・下平がある。
ハクチョウたちは3月に入ると徐々に数を減らし、下旬には姿を消す。ところが、3月後半から4月中旬になっても1羽が残留し、今もとどまっている=写真。
4月に入れば姿を消すだろうと思っていたのだが、日曜日に通るたびに、腹ばいになって休んでいたり、歩いていたり……。
「ダウンジャケット」を着たまま、日本の蒸し暑い夏を過ごさなければならないのだぞ、おい。姿を見るたびにそんなことを思って胸がざわつく。
それだけではない。越冬地を含む一帯で夏井川の改修工事が行われている。「令和元年東日本台風」でいわき地方は水害に見舞われた。その復旧と国土強靭(じん)化事業だ。
越冬地のすぐ上流でも岸辺の竹林が伐採されて姿を消した。すっかり見晴らしがよくなって、日差しを遮るものは何もない。
竹林は真夏、残留コハクチョウのエレンの避暑地になったこともあったような……。まさか、エレンではないだろうな。残留したハクチョウがエレンなら、白鳥おばさんから電話があるはずだが。
渓谷を過ぎて扇状地を蛇行してきた夏井川は、三島地内で道路の擁壁を洗いながら右へ大きくカーブする。その屈曲部に小川江筋の多段式の取水堰がある。
三島側は緩やかな浅瀬になっている。ハクチョウにとってはこの浅瀬が越冬に適した場所なのだろう。
2021年の春、ここに1羽がけがをして残留した。毎日えさをやっている白鳥おばさんは「エレン」と名付けた。
その年の11月、白鳥おばさんから電話がかかってきた。エレンが飛べるようになったという。「来春はみんなと北極圏へ戻れるんじゃないかな」。しかし、エレンは春になってもとどまった。
エレンは三島から下流に流されたこともあった。が、その後、奇跡的に復活し、北へ帰った。
2023年の年末、白鳥おばさんから電話がかかってきた。「エレンが戻ってきた。ずっと見てきたので間違いない」
そして、去年(2024年)。春にはエレンを含めて残留するハクチョウは1羽もいなかった。それが今年、また1羽が残った。けがをしていて飛べないのだろうか。
エレンなら、上のくちばしが付け根まで黒いだけでなく、付け根の黒い部分に黄色い斑点がある。くちばしを見ればエレンかどうかがわかる。しかし、道路側からは確かめようがない。
エレンであってもなくても、ハクチョウが日本の夏を過ごすのはきつい。そのことだけは変わらない。
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