わが家の近くに故義伯父の家がある。飲み仲間が来たときには「ゲストハウス」になる。
先日、故義伯父の家に行くと、庭にオレンジ色の花が咲いていた=写真。夏の花のオニユリである。
まだ7月下旬。オニユリは8月に満開になる。そんな印象が強いのは、月遅れ盆のころ、新舞子海岸の道路沿いがこの花でオレンジ色に染まるからだろう。
ユリの花は、まずはヤマユリ。隠居のある夏井川渓谷では、近年開花が早まり、7月中旬には「ヤマユリ街道」になる。今年(2025年)もそうだった。
それが終わると、今度は新舞子海岸のオニユリである。月遅れ盆の前に海岸道路を通ったとき、枯れ松が伐採されて草原化した跡地にオニユリが群生していた。
そのときの驚きをつづったブログ(2017年8月13日付)がある。それを要約・再掲する。
――わが家から新舞子海岸までは車で5~10分ほどだ。夏井川河口をはさんで黒松の防風林が伸びている、といいたいところだが……。
大津波が押し寄せたとき、松林は後背地の家や田畑を守る“クッション”になった。しかし、代償も大きかった。
地中にしみこんだ塩分の浸透圧によって松が根っこから脱水症状を起こした。やがて、遠目にも茶髪が増え、密林が疎林に変わって、とこどころ草原化した。その草原でオニユリの花が満開になった。
震災の年の夏にも海岸の波消しブロックからオニユリが花茎を伸ばし、花を咲かせていた。もともと自生していたのだろう。
オニユリはむかごで増える。黒松林の草原化という生態変化が、むかごの芽生えを容易にし、群生に拍車をかけたのだろうか。
オニユリの群生地を観光資源ととらえている石川県の海岸では、オニユリを保護するために官民で草刈り活動をしているという。
いっそ新舞子海岸の一角をオニユリの群生地として保護・保全してはどうか。アマチュアカメラマンがウデを競う新名所になるかもしれない――。
さて、故義伯父の家のオニユリである。去年も、一昨年も咲いていた、という記憶がない。カミサンに聞くと、植えてはいないという。なんと自然に根づいたのだ。
それでは海岸のオニユリを見に行くか、なんて思っているところに、7月30日朝、カムチャツカ半島沖で巨大地震が発生し、津波警報が発表された。
NHKは、始まって間もない「あさイチ」を中断して津波放送に切り替えた。あのときと同じである。
14年前の3月11日午後。激しい揺れがおさまるとテレビをつけた記憶が生々しくよみがえる。
今度もテレビをつけっぱなしにしていた。鉄道が運休し、国道6号が部分的に通行止めになった。新舞子の海岸道路もそうだったろう。津波はいわきにも来たが、被害はなかったようだ。なによりである。
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