2016年9月14日水曜日

ふっつぇ大根

 今年(2016年)も“ふっつぇ大根”が芽生え、葉を広げている=写真(背の高いのは“ふっつぇシソ”)。夏井川渓谷の隠居の庭の一角。倒れて菜園をふさぐ桐の木の枝をナタで払い、細断しているうちに、雑草にまみれて生えているのがわかった。
「ふっつぇ」は「自然に生まれた」を意味するいわき語。こぼれ種から生えてきたのはすべて「ふっつえ」だ。シソがそう。ミツバもこぼれ種で増える。

 大根は会津産。辛み大根で、震災翌年の2012年夏、豊間で津波被害に遭い、内陸部の借り上げ住宅で暮らしながら、家庭菜園に精を出している知人(女性)から、種の入ったさやをもらった。原発事故が起きて家庭菜園を続ける気持ちが萎(な)えていたころだ。
 
 やがて、はがきが届いた。「三春のネギのそばに辛味大根をまきましたか? 被災者の私でさえ百姓しているのにだめだっぺヨ 畑を荒らしては」。発奮してさやから種を取り出し、まいた。

 2013年師走に庭が全面除染された。翌年春には栽培を再開した。知人からもらった辛み大根のさやが残っていたので、初秋に種をまいた。以来、三春ネギ同様、辛み大根も「自産自消」を続けている。

 去年も“ふっつぇ大根”が生えた。ちょうど今ごろ、双葉の時期を過ぎ、本葉へと生長した若苗が数株あった。今年も葉が大きくなっていた。

 辛み大根の根は、本来、小さくずんぐりして硬い。3回栽培して思うのだが、ずんぐりさせるには、土は硬い方がいいのではないか。土をほぐした畝(うね)では、すくすく根を伸ばしてしまう。細すぎておろし器にはかけられないし、刻んで浅漬けにしても硬くてまずい。自生に近い状態だと“ストレス太り”になる? それを、今度の“ふっつぇ大根”で確かめよう。
 
 今年も初夏、種の眠るさやをたくさん採った。ほんとうは8月後半に種をまくべきだったが、前半はロシア旅行、後半は台風・前線に気を取られて忘れていた。こぼれて土にまみれていた種は、しかし、ちゃんと秋を感知して芽を出した。
 
 大根の種の寿命はわりと長い。種まきは来年に回して、“ふっつぇ大根”を育てる。そう決めたところへ、イタリアから手紙が届いた。「ぶどうの収穫が始まり、クルミやクリの実、そしてキノコがとれる実りの秋がやってきます」。日本の、いや阿武隈の秋も5年半前まではそうだった。

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