東京の知人を車で四倉へ送り届けた足で、道の駅「よつくら港」をのぞいた。午前10時、開店から1時間後。じいさん・ばあさんでにぎわっていた(こちらも同類だが、もっと先輩たちだ)。ご主人がまだ車を運転できる、奥さんもそれなりに体が動く――そういう人たちがスーパーへ行くように、道の駅で日常の買い物をしているのだろう。
前に買った梅干しが切れたので、補充することにした。小川の大平商店の梅干し、ラッキョウの甘酢漬けがあった。カリカリした食感が好みで、あれば手が伸びる甘梅漬けもあった。甘梅着けはしかし、買うのを控えた。食べすぎる。あるだけ食べてしまう(食べ続けたら、梅酢で歯の表面がぼろぼろにならないか――そんなことまで考えてしまうほど好きだが、我慢した)
きょうは十五夜(中秋の名月)――そんなポップ(販促広告)が添えられた素甘(すあま)があった。私はちらりと見て通り過ぎたが、カミサンは「満月なんだ」とつぶやいて、それを手に取った。
晩酌の時間になって、カミサンが床の間にススキと萩の花をかざり、縁側に素甘を供えた。食卓には梅干しとラッキョウの甘酢漬け=写真。曇って満月は見られなかった。
と、そこへ首都圏から電話がかかってきた。昔、集団登校から遅れて小学校へ行く兄弟がいた。聞けば、朝ご飯を食べていないという。カミサンが大急ぎでおにぎりをつくり、食べさせた。それがしばらく続いた。ほかにもいろいろあった。それから12年後の、当時小2の弟からの電話だった。ネットで番号を調べたという。
20歳になった。結婚し、2歳の娘がいる。「おばさん、遅れましたが、ありがとうございます」。カミサンがたちまち涙声になる。「ぼくも泣きそうです」。どうしておにぎりを食べさせてくれたのかを聞きたかったらしい(ここには書けないが、2人とも厳しい家庭環境にあった)。つい先日も、あの子たちはどうしているだろうと、二人で話したばかりだった。
夜8時半。外へ出ると、満月がうっすらと中天近くにあった。カミサンに知らせる。月を見上げながらカミサンがいった。「よかった、きょうは最後に(うれしい電話があって、満月も見られて)」
0 件のコメント:
コメントを投稿