前線や台風12号崩れの低気圧の影響でまた天気が荒れた。それでも雲の上には青空が広がる。けさ9月9日5時すぎ、いわきの東の空は青磁の理想の色とされる「雨過天晴雲破処」(雨がやみ雲が切れて青空がのぞく)だった。
雲は天才だ、と明治の歌人がいった。1カ月ほど前、旅客機の窓から見た雲海の上の“光景”が忘れられない。
今年(2016年)8月2日夕、雨上がりの成田からサハリン(樺太)へ飛んだ。飛行ルートは成田―仙台―札幌―ユジノサハリンスクで、それを直線で結ぶと、いわきの西方、阿武隈高地を北上し、大滝根山あたりをかすめた感じになる。が、雲海にさえぎられてどこを飛んでいるかはわからなかった。
旅客機は70人乗りくらいの双発プロペラ機だ。離陸したのは午後4時半、サハリンまでの所要時間は2時間半。飛行を始めて1時間半になるころ、雲海が切れて眼下に海が見えた。あとで海岸線のかたちを地図とグーグルアースで確かめたら、陸奥(むつ)湾だった。雲間から差し込む夕日が海面に反射していた。
北海道上空に達すると、再び雲海が広がった。立ちあがって吠える熊のような積乱雲がいくつも連なっていた。その数だけ「ヤコブのはしご」と影があった=写真。帯状の光と影の荘厳さ。人間には厳しい神々が、人間に見えない天上で雲と遊んでいる。自在に自分を造形する雲はやはり天才だ。
やがて雲海に“孤島”が現れた。北海道の西に浮かぶ島は山に高低がある。突き抜けた高さは利尻島の1721メートル。利尻山だろうか。
雲海とその切れ目で目撃した夕暮れの空、海、山の神々しさ――。にしても、このごろ気象がおかしい。台風が東北に初上陸し、北海道が風神や雨神(うじん)に狙われている。きょうも北上中の低気圧が東北・北海道をうかがう。地球温暖化の影響だとしたら、「北海道に梅雨はない」という話は、もう過去のものになるのかもしれない。そうなったら日本の亜熱帯域も北へと広がる。雲よ、教えてくれ、これから地球はどうなるの?
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