2016年9月21日水曜日

雨の波紋

 雨の日曜日(9月18日)――。夏井川渓谷の隠居へ出かけたが、やることがない。カミサンが部屋の掃除をする。邪魔にならないように廊下へ移り、ロッキングチェアで「ゴルゴ13」を読んでいた(役割分担で、雨が降っていなければ土いじりをするのだが)。
 庭に川内村の陶芸家がつくったテーブルがある。川内産の丸太と角材、板を組み合わせただけのものだが、外で飲み食いするときに重宝している。雨粒がテーブル板をたたいて波紋をつくっていた。んっ! デジカメをスポーツモードにして連写したら、雨がテーブルに衝突して散る瞬間が撮れるかもしれない――ひらめきはよかったのだが、ウデがいまいちだからピンボケになった=写真。

 雨の写真を撮ったり、漫画を読んだり、朝寝をしたりしているところへ、珍しく人が訪ねてきた。地元の区長さんだった。「家に電話したけど出なかったから、こっちに来てると思って。今晩、無常講(葬式の互助組織)の集まりがある、泊まっていったら」。飲み会に加われ、ということだ。

 現役を引退したとたん、土曜日も日曜日もなくなった。日曜日の「日帰り」が精いっぱいで、お誘いはありがたいが参加を見送った。

「まあ、お茶でも」。集落の暮らしや自然、歴史を知るにはいいチャンスだ。茶の間に上がってもらい、しばらく雑談する。平地(マチ)と違って、渓谷(ヤマ)の人の話はおもしろい。

 雑仕事といったら失礼だが、マチ場では専業・分化している大工・左官・石工といった仕事を、一人でこなす。わが隠居の庭の石垣が一部、大地震で崩れたままになっている。「直そうか」といってくれた。ただでやってもらうわけにはいかないので、「いつかはお願いする」ということにしたが、集落には頼もしい存在だ。
 
 キノコや木の実・山菜にも詳しいだろうと思ったら、違っていた。「沖釣り」派だった。「森の中をぶらぶら歩くのは好きではない。きのう(9月17日)も一人、ゴムボートで沖に出てメバルを釣った」。そういえば、昔、集落の飲み会に参加したとき、自分で釣ったアイナメの刺し身を提供した。
 
 十人十色。人には会ってみよ、話は聴いてみよ――で、雨のおかげでいい茶飲み話ができた。

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