2016年9月7日水曜日

選択的定住

 郡山市立美術館からの帰り、三春町にある雑貨屋「in-kyo(インキョ)」=写真=へ寄った。雑誌「天然生活」(2016年9月号)と、オーナーの女性のブログによると、彼女は千葉県、ご主人は福島県郡山市生まれ。三春に住まいを見つけ、さらに自宅から車で数分の町なかに今年(2016年)4月、東京の店を移転・再オープンした。作家ものの器や雑貨、衣類、本、写真などを売っている。
 美術館も雑貨屋もカミサンの希望だった。行政資料の振り分けや配布、いわき地域学會の市民講座案内のあて名張りなど、カミサンにはふだんからいろいろ手伝ってもらっている。たまにはカミサンのいうことを聞かないと、この「内助」が途切れる。

 カミサンと「in-kyo」のオーナーの話を聞くともなく聞いていると、いわきに友人がいる、行ったこともあるという。その友人とは直接会ったことはないが、わが家にやって来る若い女性の知り合いだった。

 そうか――。社会の軸になるのはいつも20~40代だ。政治や経済はともかく、文化についていえば絶えず若い人たちが新しい何かに挑み、その波紋が広がってまた何かを生み出す、といったダイナミズムに満ちている。それで、古い世代の役割は――と、このごろよく考える。バトンタッチをする意味も込めて若い世代を応援することだ。そんなことを三春でも思った。
 
 いわきでも震災後、20~40代の若者の動きが活発になってきた。新しい文化的エンジンが生まれつつある予感がする。先月(8月)、いわきにIターンした若い夫婦と酒を酌み交わして、さらにそのことを実感した。
 
 震災後、福島県に移り住む若者がいる、という事実。出生地は選べないという意味ではもともとの住民は「宿命的定住」者だが、これに「選択的定住」をするニューカマーがかむことで、地域の文化は適度に撹拌される。新しい化学反応がおきる。私自身、Jターンの「選択的定住」者なので、撹拌の難しさも面白さも知っている。
 
 三春では、店の名前「in-kyo」の由来を聞いた。隠居に住んでいた祖母との思い出が原点らしい。週末、夏井川渓谷の隠居で過ごす身としては、「インキョ」の響きが懐かしく新しかった。

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