2017年1月29日日曜日

神谷産の白菜を漬ける

 いわき市の山里・三和町の直売所から買ってきた白菜は、やはり甘みがあってうまかった。また買いに行こうという段になって雪が降った。カミサンが近所の農家の直売所へ行ったら白菜があった。ふだんは無人だが、たまたま生産者がいた。「寒くなったから甘いよ」といわれたという。ではと、神谷(かべや)の白菜を漬けることにした。
 真冬にはいわきの平地でも最低気温が氷点下になる。畑の白菜は凍るまいと内部に糖分をたくわえる。この糖分が甘みのもとだ。

 甘い白菜にうまみを増すため、いつもは板昆布を砕いてちらす=写真。ところが、暮れにそれを切らした。しかたない。買い置きの刻み昆布を細かく切って白菜にちらした。

 白菜が漬かったので、切って食卓に出すと、隣家に住む義弟が刻み昆布を箸でよけた。白菜に枯れ草の茎がくっついているとでも思ったか。「昆布だから食べられる」。それで初めて納得したようだった。
 
 今度も刻み昆布を使ってみた。外からではなく、葉の間に塩とともにちらした。松前風白菜漬けは、葉と葉の間に細切りのニンジンやスルメ、昆布が入っている。ただの白菜漬けと違って下漬けなどの手間がかかる。刻み昆布を葉の間にちらしているうちに、その「松前風」が頭に浮かんだ。「プロシューマー」(生産消費者)という言葉も。
 
「プロシューマー」は『第三の波』の著者、アルビン・トフラーの造語だ。「コンシューマー」(消費者)であって「プロデューサー」(生産者)――カネではなく、家族や自分の満足のために生産する消費者のことを指すらしい。

 もう何年も前、いわき昔野菜フェスティバルで江頭宏昌山形大教授(当時・准教授)が講演した。そのとき「プロシューマー」を知った。教授は以来、欠かさずフェスティバルに参加している。今年(2017年)は2月5日に中央台公民館で開かれる。

 最近、ネギ生産者と話して思ったことだが――。一般の消費者が好むのは「白くテカテカして見た目はきれいなネギ」。しかし、「プロシューマー」の経験を積めば、「曲がっているけど加熱すれば甘くて味のよいネギ」があることがわかってくる。一人の人間のなかに、甘みの増した白菜を求める消費者と、自分の満足のために白菜漬けをつくる生産者がいる。今度は「松前風」に挑むか。

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