2017年1月2日月曜日

紅白イエモン

 大みそかの夜はなんとなくNHKの紅白歌合戦を見て過ごす。どんな歌手が出演するのかはあまりよくわからない。新聞、ファンのフェイスブック、当のNHKの情報でピンポイント的に知るだけだ。
 ハーフタイムにピコ太郎が出た。「あさイチ」で出演を知った。が、このグループはNHKの直前番組を見るまでわからなかった。イエローモンキー、復活していたのか!

 去年(2016年)12月30日の朝日新聞に、SMAPへの感謝と惜別をこめた意見広告が載った。なんと全8ページ。しかも、朝日新聞社のクラウドファンディングサイトを活用したものだという。自社の新聞に広告を載せるためのファン動員だったか――そんなことをちらりと思ったが、もちろん“真相”は別のところにあるのだろう。

 次の日、また朝日に同じようなスタイルの文字広告が載った=写真。読んでいるうちに、ん?となった。イエモンの曲「JAM」の歌詞だった。「外国で飛行機が墜(お)ちました ニュースキャスターは嬉しそうに『乗客に日本人はいませんでした』『いませんでした』『いませんでした』……」。「JAM」はしかし、本筋は「君に逢いたくて君に逢いたくて」にある。井上陽水の「傘がない」に共通する愛の歌だ。
 
 全面広告を見たときにはわからなかったが、直前番組を見て合点がいった。広告を読み返すと、だんだん大きくなった歌詞の文字のあとに極小文字で「今晩JAM歌います。……」とある。紅白出演を告げる広告だった。
 
 ざっと20年前、長男からエンヤや佐野元春、イエモンらを教えられた。いくつかカセットテープを譲り受けて、車の中で聴き続けた。

「JAM」がぐさっときた。ニュースを発信する側に身を置いていたので、「乗客に日本人はいませんでした」には複雑な思いを抱いた。国内外を問わずなにかあったとき、肉親・友人・知人の安否が気になる。「日本人はいませんでした」はそういう人たちに安心を提供する。一方で、いのちの普遍性という視点からは「日本人が無事ならいいのか」という反応も生まれる。

 報道はどこでも、いつでも自国(ナショナルメディア)・自県(ローカルメディア)・自地域(コミュニティメディア)の視点で展開される。「日本人はいませんでした」には、メディアの特性と限界が示されている。
 
 飛行機事故だけではない。船舶・列車・バス事故、そしてテロ事件。きのう(1月1日)未明(日本では朝)、トルコのナイトクラブで銃乱射事件が起きた。時事通信は「日本領事館によると、これまでのところ日本人が巻き込まれたという情報は入っていない」と報じた。だれかの安心のためには、こういう情報が欠かせないと思いつつ、やはりなんとなく釈然としないものが残った。

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