裏の義弟の家の庭に梅の木がある。もう何日も前に、カミサンから花=写真=が咲いていることを聞いた。きのう(1月30日)は暖かかった。梅のつぼみがさらにほころんだことだろう。
極寒期にも次の季節の準備が始まっている。「一陽来復」の冬至から1カ月余り。“一日一分”、日の出が早まり、日の入りが遅くなる。春は近い。庭のスイセンも間もなく咲き出すはずだ。
自然界の穏やかな移り行きとは裏腹に、人間界の動きは急にあわただしくなってきた。7カ国からの入国を拒否するアメリカの「大統領令」が世界のあちこちで混乱を引き起こしている。きのうまでは“合法”だった人の出入国に待ったがかかる。日本の航空会社にも影響が及んだ。
共同通信の全国世論調査では、トランプ氏の大統領就任で国際情勢不安定化を懸念する声が8割余に達した。これはもう国民全体の空気といっていい。
空港の混乱やデモのニュースに触れて、いささか憂鬱な気分になっていたら、敬愛する“お姉さん”がやって来た。カミサンと話しているところに加わった。芸術、政治、ファッション、人物評と話題は尽きない。「大統領令」にも話が及んだ。
政治は人々の福祉のためにある。人々の暮らしを混乱させる、あるいは不幸にするやり方はおかしい。ヒトゴトではない。現に、太平洋戦争前には“排日移民法”があった。
詩に興味を持ち始めた50年ほど前、雑誌「文藝春秋」で金子光晴の短詩「ほどらひ」を知った。「ほどらひ」は「ほどらい」、「ほどあい」と同じで「適当な程度」という意味だ。それをこのごろ、ずっと思い出している。
「ほどらひといふことが ござる/ひとを好くにしても、憎むにも/またせるにしても、待つのにも/また、なが生きをするにしても∥へうきんなおれの人生だつたが/金がないので、まだたすかった/さうは言へ 金はないにしても/ほどらひといふことが ござる」
「ほどらひ」が必要なのは、人の好き嫌いや待つ・待たせる、長生き、カネの有無――だけではない。政治は極端に走ったら、惨劇を招く。大事なのは現実主義の微妙なバランス感覚、「ほどらい」だろう。「殿、ほどらひといふことがござる」といえる人はいないのか。
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