年があらたまって初めて、夏井川渓谷の隠居へ出かけた。庭を見て驚いた。西側の一角がほじくり返されている。犯人は?
2013年2月、市が隠居の庭の放射線量を測った。平均値が毎時0.23マイクロシーベルトを0.01上回ったために、師走、全面除染が行われた。表土がはぎとられ、山砂が投入されて、庭が砂浜のようになった。時がたつにつれて草が増えたが、まだ地面を覆いつくすほどではない。
今はほとんどの草が枯れて黄土色になっている。そこがぐちゃぐちゃに荒らされた。これまでにも何度か、そばの土手や休耕中のうねがほじくり返されている。犯人はミミズ狙いのイノシシだ。今度もそうだろう。
隠居は県道沿いにある。庭の南側は一段低くなった空き地で、ヨシが繁茂するため、年に2回は業者に頼んで草刈りをする。その南、敷地境界の土手の下には電力会社の私道が通っている。夏井川の対岸に水力発電所がある。発電所にはつり橋を渡っていく。
敷地境界の土手はすっかりヤブ化した。木も茂っている。その木に2009年と11年の2月、エノキタケが発生した。以来、冬になると、じっくりヤブをながめるのだが、“再会”はまだかなわない。
きのう(1月8日)もそうしてチェックしたら……。エノキタケの代わりに、“けもの道”に遭遇した=写真。ササダケに覆われているが、すき間を縫って下の電力の私道から簡単に上がって来られるようになっている。これだ、これが“イノシシの道”かもしれない。ハクビシンも、ノウサギもたぶん、そこを通って隠居の庭へやって来る。
あるときは、日中、つり橋を渡ってくるタヌキを目撃した。対岸の森でよく、黒い碁石のようなイノシシの糞を見かけた。それからの連想。日が暮れると、対岸からイノシシ(親子か単独かはわからないが)がつり橋を渡ってやって来る。私道沿いにまっすぐ進んだり、ヤブを横切ってわが隠居の庭へ入り込んだり……。
庭の下の空き地は刈られたあとにのびた草が枯れている。その枯れ草が、線状に踏み倒されているところがある。その先にあるのは庭へと通じる枕木を利用した階段。これも“イノシシの道”にちがいない。
イノシシは美食家だ。地上に現れる前のタケノコを掘り起こす。ヤマイモも、ヤマユリの根も食べる。先日、わが隠居とは車で数分のところに住む友人宅のロックガーデンにあったヤマユリの根がイノシシに食べられた。
トリュフ(セイヨウショウロ)も見逃さない。阿武隈の山中からその仲間が発見された。イノシシが掘った穴に残っていたのでわかった。イノシシは田畑や庭園を荒らす厄介者だが、愛菌家の間では新発見をもたらす“森先案内人”でもある。
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