わが神谷(かべや)地区には、出羽と立鉾鹿島の二つの神社がある。地区内の行政区のひとつで役員をしているので、例大祭が近づくと招待状が届く。立鉾鹿島神社は初夏の5月、出羽神社は秋の10月に祭りが行われる。
きのう(10月9日)朝、出羽神社の例大祭に臨席した。神社は急な石段を何段ものぼった小山(羽黒山)の頂上にある。息を切らして境内に立つと、旧知の長寿会長からほめられた。まだ石段をのぼってこられる体力がある――耐久レースでゴールする選手のような迎え方だった。
拝殿での神事のあと、社務所で直会(なおらい)が行われた。途中で抜け、ふもとで神輿が下りてくるのを待つ。と、担ぎ手の青年氏子だけが石段を下りてきた。神輿は軽トラで、別の道を下ったという。雨上がりで石段が濡れている。神輿を担いだまま下りると、滑ったときにオオゴトになる、という判断があったのだろう。
神輿渡御は神社によって特徴がある。立鉾鹿島の場合は、神輿が境内そばの常磐線を渡る。明治時代、参道を横断して常磐線が敷設された。祭りの日だけは旧参道が復活する。出羽の神輿は稲穂が垂れる田園地帯を練り歩き、さらに夏井川で担ぎ手がみそぎをする。
交通誘導係の総代の一人が「ここで最初のサカムカエをします」。教えられたところは、平六小そばの、元診療所の建物を利用してオープンした「スープカフェあかり」だ。診療所の主は「やけど医者」として有名だった。別の誘導係が「3歳のとき、やけどしてここに来た。母親が先生に怒られた」という。
いったん南の道路に出た神輿が回って来た。「あかり」の庭に神輿が鎮座する=写真。店のオーナーがうながされて神輿の前に立つ。同じようにお札を頼んだ近所の氏子も並ぶ。こうして何カ所かで神輿が鎮座し、お札を配るサカムカエが行われるのだろう。
神事の間、担ぎ手が「スープが……」どうの、「診療所が……」どうのといった話をしている。山すそに沿って伸びる小集落の一角にできたスープの店に興味津々、といった風だった。
サカムカエを見るのは初めてだった。「あかり」の経営者も街のなかから店を移転・再開して初めて迎える“村祭り”だ。お札をもらう当事者としてハレの日に加わり、いい経験をしたにちがいない。
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