10月11日まで、いわき市泉ケ丘のギャラリーいわきで「スペインの光と風 阿部幸洋新作展」が開かれている。2日目のきのう(10月7日)午後、出かけた。
阿部(という言い方を許していただきたい)とはざっと45年前、彼がいわき市平の草野美術ホールで2回目の個展を開いたとき、取材で知り合った。私は23歳、阿部は20歳だった。やがて結婚し、スペインへ渡ってラ・マンチャ地方の村に住み、奥さんが亡くなったあともひとり、そこで絵を描き続けている。
個展のたびに新しい試みをする。今回も壺を主体にした幻想的な作品に引き寄せられた=写真中央。
先客の応対に忙しい本人とは「おー」「ああ」で終わり、あとは旧知の人間と草野美術ホールの話になった。
10月23日に平のアートスペースエリコーナで、「いわきの現代美術の系譜」と題したシンポジウムが開かれる。<いわきまちなかアートフェスティバル玄玄天>の一環で、6人が登壇する。
ギャラリーにも主催者が告知のチラシを届けたらしく、「講演するんだって?」と知り合いがいうので、「シンポジウムだよ、その一人として話すだけだよ」と返したあたりから、一気に「いわきの現代美術のルーツ」である元草野美術ホールにタイムスリップした。同ホールに出入りしていた後輩の奥方も話に加わった。
同ホールがいわきの美術界に果たした役割・意義の大きさはいうまでもない。同ホールを母体に生まれたものの一つが「いわき市民ギャラリー」といってもよい。
シンポジウム告知のチラシには「市民が自主的に参集し、自らの手で作品を選び、企画運営する『ハイレベルの美術展』」を目指すと宣言した「市民ギャラリー」はその後、その宣言通りに、ヘンリー・ムーア、ロダン、クリムトなどの現代美術の展覧会を成功させていく。その熱は行政も動かして、市立美術館の建設に結実した――とある。
と同時に、と思う。ホール経営者の「おっちゃん」は“避難港の灯台守”のようだった。当時、高校生だった奥方がいう。本人のことかどうかはわからない。「学校へ行きたくないのでホールに寄った。『海を見たい』というと、バス代を出してくれた」。別の女性も、先日、こんなことをいっていた。「草野ホールの事務所は心療内科のようだったね」。おっちゃんに救われ、励まされた人間がいっぱいいる。そんなことも話そうと思う。
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