2016年10月7日金曜日

サケの帰還

 いわき市平中神谷(対岸は平山崎)地内の夏井川――。例年だと、9月中旬にはサケの簗(やな)ができる。今年(2016年)は遅れること半月、やっと対岸に鉄柵の生簀(いけす)が組み立てられた=写真。こちら・中神谷の河川敷には鉄製の簗を支えるドラム缶。(堤防を通ったのは4日前だから、もう簗はできただろうか)=きょう(10月7日)朝見たら、そのままだった。 
 夏井川では、東日本大震災とそれに伴う原発事故後も、鮭増殖組合が採捕・採卵・ふ化・放流事業を続けている。県のデータによれば、同川の採捕尾数は平成24年度2707匹、以後、3048匹、2764匹と続き、昨27年度は2971匹だった。

 春に放流された稚魚はおおむね4年後、北洋からふるさとの川へ戻る。今、夏井川を遡上するサケは震災後に放流されたものだ。

 原発事故が起きる前には、簗場のそばにテントが立ち、「夏井川の鮭」ののぼりがはためいていた。テントの柱には「サケ売ります メス一尾1500円」の張り紙。ずいぶん前の記憶だが、河口部でもサケを売っていたことがある。

 いわき市の北、双葉郡楢葉町の木戸川では昨年、震災で中断されていたサケ漁が再開し、一本釣りも2日間だけ試験的に復活した。同川のサケ増殖事業は、夏井川の比ではない。採捕尾数は平成21年度8万5千弱、22年度3万8千弱と際立って多い。一本釣りはサケの有効利用調査という名目で、一日40人限定で1カ月間実施されていた。

 8月初旬、ロシアのサハリン(樺太)を旅した。日本語ガイドの勧めもあって、仲間が川でカラフトマスの一本釣りを体験した。マス釣りの楽しみは大物を釣り上げる豪快さにあることを実感した。

 カラフトマスは体長50センチ前後。日本の川に帰ってくるシロザケは70~80センチと、はるかに大きい。木戸川の一本釣りが人気を集めるのは、この大型魚の引きの強さだろう。サハリンへ行かなくても、楢葉でサケの一本釣りができる――門外漢にもようやく、そのくらいのことはわかるようになった。

 秋が少しずつ深まっている。とはいえ、10月に入って真夏日を記録した。こうした気象変動の影響でサケの南下・遡上が遅れ、簗場づくりも遅くなった?ということはあるまいが。間もなく簗場の上流にハクチョウが飛来する。神谷の夏井川がいのちで満ちる時期だ。

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