雨上がりのきのう(11月12日)は小名浜で最高気温19.5度と、小春日になった。朝から昼過ぎまで、いわき市暮らしの伝承郷の民家ゾーンにいた。かやぶき屋根の下、濡れ縁で日なたぼっこをしていると、暖かさを通り越して汗ばむほどだった。
「収穫祝いの餅つき」イベントが開かれた。伝承郷主催、いわき昔野菜保存会共催で、保存会の一員としてイベントに参加した。来園者をもてなす側だが、手伝えるだけのウデがない。そのへんをうろうろしたあと、昼に餅と「のっぺい汁」をいただいた。
伝承郷の畑の一部を借りて保存会が昔野菜を栽培している。そのため、保存会員は伝承郷のボランティア登録もしている。伝承郷本来のボランティアはもちつきを、保存会のボランティアは「のっぺい汁」を担当した。去年(2015年)同様、もちつきと試食会は旧猪狩家で行われた。もち米は隣接する旧高木家のカマドで蒸した。
餅はきなことじゅうねん(エゴマ)でまぶした。「のっぺい汁」は、平成7(1995)年にいわき市が発行した『いわき市伝統郷土食調査報告書』を参考にしたという。
同調査報告書は、いわき地域学會が市から委託されてまとめた。「のっぺい汁」の「ひとくちメモ」によると、①通夜・葬式・法事などの仏事につくることが多い②「のっぺい」の語源ははっきりしない③いわき(磐城)地方では「はちはい」とも呼ばれる④料理の最後に水で溶いた葛粉や片栗粉でとろみをつける。
江戸時代、磐城平藩を治めていた内藤氏が九州の延岡藩に転封される。延岡では今でも家臣の子孫の間で、仏事に「のっぺい汁」がつくられるそうだ。延岡にはもともとなかった料理らしいと、「ひとくちメモ」にはある。いわき地方というより、東北地方独特の料理のようだ、とも。
材料はサトイモ・ニンジン・ゴボウ・シイタケ・油揚げで、しょうゆと酒、塩少々で味をつける。これに、ネギが加わった。白根も葉もやわらかい。料理を担当した仲間に聞くと、昔野菜の「いわき一本太ネギ」だという。道理で。
伝承郷には昔の農具や生活道具が保存されている。やって来た親子連れなどが石臼・千歯こき・足踏み脱穀機・唐箕(とうみ)・芋洗い棒を体験した。甘柿もぎりもした。年長者は道具を見るなり「懐かしい」、子どもたちは初めて見る“遊び道具”に興奮していた。
足踏み脱穀機は、千歯こきに回転力を与えたようなものだ。木製のドラムに逆V字型の鉄の歯がさしてあり、ペダルを踏むと「ガーコン、ガーコン」と回転する。そこへ麦や稲や粟の穂を当てて脱穀する。
手で回さずに足踏みから始めると、手前に逆回転する。手が巻き込まれる心配がある。小学校に入ったころ、母の実家で家族総出で麦の脱穀が行われた。昼食時、「ガーコン、ガーコン」といたずらしているうちに、逆回転になってドラムに手をはさまれた。骨が折れたり血が出たりはしなかったが、痛かった。
昔の道具体験を指導した大人たちはたぶん、同じように子どものころ、痛い目に遭っている。子どもが勝手に「ガーコン」をやり始めそうになると、ストップをかけて回し方を教える。「勉強はできなかったけど、こういうのはできんだ」。知人が胸を張っていた。
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