夏井川渓谷の小集落で教えられたことばに「終わり初物」がある。「初物」はだれでも知っている。シーズン最初に収穫・採取、あるいは買って口にする野菜・果樹・山菜・キノコなどのことだ。「終わり初物」はその逆で、収穫・採取が旬を過ぎて「これで終わり」の野菜などを指す。
たとえば、ワラビ。渓谷では4月末になると「初物」が手に入る。摘まれたワラビからはまた子ワラビが出る。これを摘む人もいる。夏には次の年のことも考えて「終わり初物」にする。
渓谷にある隠居の「ベジ・パッチ」(家庭菜園)では今年(2016年)、三春ネギのほかに、震災後初めてキュウリ・ナス・トウガラシ各2株を栽培した。自家採種の三春ネギ以外は、ホームセンターからポット苗を買って植えた。
苗たちと向き合えるのは週末。月に4回ではまともな手入れができない。思ったほどには収穫がなかった。原発事故後、庭が全面除染の対象になり、菜園の土も取り除かれて山砂が敷き詰められた。土に栄養がないことも関係したか。
トウガラシには裏切られた。成熟しても「あおく細長いピーマン」だった。「食べるトウガラシ」らしい。次から次に実はなった。摘んではカミサンに渡し、炒めものにする。その繰り返しだった。
10月9日に三春ネギの種まきをした。それから半月後、放置していた老残のキュウリを引っこ抜き、実をつけなくなったナスを、ついでにトウガラシを始末した。“ピーマントウガラシ”にはまだ実がついていた。それを摘んだ。今年の「終わり初物」だ=写真。
冬の白菜漬けその他に使うため、ほんとうは赤く熟する「鷹の爪」がほしかった。今年は苗選びに失敗したうえに、キュウリもナスも実のなりがイマイチだった。来年は四倉の地元の苗屋へ行く。ベジ・パッチを始めたころの“初心”に帰る。
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