2017年8月12日土曜日

キノコを撮りにウラヤマへ

 8月11日は国民の祝日「山の日」。ではと、平の街のウラヤマ(石森山)へ車を走らせ、林内の遊歩道を巡った。
 このウラヤマには、夏井川渓谷の隠居へ通う前の十数年間、20代後半から40代前半にちょくちょくもぐりこんだものだ。遊歩道網が整備されている。鳥・花・キノコ・虫たちのウオッチングスポットでもある。

 観察フィールドを渓谷に切り替えたあとも、懐かしくて2年に一度くらいはウラヤマへ出かけた。不思議なもので、遊歩道を巡っていると、「ここでタマゴタケを撮(採)った」「アラゲキクラゲを撮(採)った」「オオゴムタケを撮(採)った」と、逐一、記憶がよみがえる。

 まずは、傘が真っ赤なタマゴタケ、そしてアラゲキクラゲを撮(採)る、と意気込んだものの――。

 遊歩道はアップダウンの繰り返し。最初の尾根のアップ(高さは4階建て住宅の最上階くらいだろうか)だけで音を上げた。尾根の陰の斜面にタマゴタケが群生しているはずだが、すでに菌糸は移動したのか、目を凝らしても赤い色はなかった。

 尾根道を戻って、沢沿いの平坦な遊歩道を進む。奥にアラゲキクラゲの生える倒木や立ち枯れの木があったが、20年もたてば朽ち果てて影も形もない。新しい倒木にも立ち枯れの木にもアラゲはなかった。
 
 車で移動しながら別の遊歩道を出たり入ったりしてチェックしたが、目に入ったのはベニタケ科のキノコ=写真(シロハツ?)=と、イグチ科のキノコ数種類だけだった。細かく裂いて油でいため、醤油味のうどんスープにすると抜群のチチタケも、姿はなかった。
 
 会津の山林で10日、栃木県のお年寄りが岩場から足を滑らせて転落死した。きのうの新聞各紙が報じている。
 
 栃木県人は夏、福島県内の山林に入ってチチタケを採りまくることで有名だ。「チダケ(チチタケ)うどん」のスープにする。これまでにも何度か死傷事故を起こして新聞沙汰になっている。
 
 きのうの朝日には「山菜を採っていた」、読売には「キノコ採りに入り」とあった。朝日は誤報、記者は山菜とキノコの違いがわからないのだろう。読売はキノコを特定するためのもう一歩が足りなかった。
 
 福島民報も「キノコ採りに入った」としながらも、「栃木県で食材として使う『チタケ』と呼ばれるキノコを採るため、毎年多くの人が県外から訪れ、所有者に許可なく入山するケースが絶えないという」と、栃木県人が入山する背景を説明している。
 
 夏になると、いわき市内の山林でも「栃木」(現在は「宇都宮」「とちぎ」「那須」)ナンバーの車をよく見かけたものだ。今もそうかもしれない。「栃木県人のチタケ狂い」は、愛菌家の間ではよく知られている。
 
 年をとると、山道のアップダウンがきつくなる。しかし、道からそれて急斜面に分け入らないと、めざすキノコは撮(採)れない。頭では若いときの栄光を追いながらも、体は言うことをきかなくなっている。雨上がり、落ち葉の斜面は濡れている。ますますリスクが高くなる。ウラヤマのような里山でも栃木県のお年寄りのようにならないとはかぎらない。道からそれて斜面に分け入る勇気はなかった。

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