「山の日」の8月11日は、東日本大震災から6年5カ月の月命日でもあった。朝はひとり、平の街のウラヤマ(石森山)を巡って山の恵みに感謝し、夕方は用があったついでにカミサンの希望で海を見に行った。
わが家から新舞子海岸までは車で5~10分ほどだ。夏井川河口をはさんで黒松の防風林が伸びている、といいたいところだが……。
大津波が押し寄せたとき、松林は後背地の家や田畑を守る“クッション”になった。しかし、代償も大きかった。地中にしみこんだ塩分の浸透圧によって松が根っこから脱水症状を起こした。やがて、遠目にも茶髪が増え、密林が疎林に変わって、とこどころ草原化した。その草原でオニユリの花が満開だった=写真。
オニユリは7月下旬から8月上旬に花を咲かせる。この時期、新舞子の海岸道路は、ところどころオニユリの花でオレンジ色に染まる。震災の年の夏にも海岸の波消しブロックからオニユリが花茎を伸ばし、花を咲かせていた。もともと自生していたのだろう。
3年前の夏、“異変”に気づいた。立ち枯れ松を伐採した跡地がオニユリの群生地になっている。前からそうだったとしても、ここまで目立たつようなことはなかった。オニユリはむかごで増える。黒松林の草原化という生態変化が、むかごの芽生えを容易にし、群生に拍車をかけたのだろうか。
もしそうだとしたら、これを逆手に取る手もある。黒松林が再生されるまでは「津波がもたらしたオニユリの群生地・新舞子海岸」の看板を掲げられるかもしれない。それはそれで大切にしたい浜辺の植物だ。
オニユリの群生地を観光資源ととらえている石川県の海岸では、オニユリを保護するために官民で草刈り活動をしているという。いっそ新舞子海岸の一角をオニユリの群生地として保護・保全してはどうか。アマチュアカメラマンがウデを競う新名所になるかもしれない。
0 件のコメント:
コメントを投稿