2018年2月15日木曜日

モテネギとオクイモの味噌汁

 少し古い話になるが――。2月4日にいわき昔野菜フェスティバル(いわき昔野菜保存会主催)が開かれた際、里芋とオクイモ、モテネギが参加者におみやげとして配られた(いわき市発行の『いわき昔野菜図譜』やレシピ集では「おくいも」「もてねぎ」と平仮名表記だが、ここでは片仮名表記にした)=写真。
 オクイモはいわき市山玉町で栽培されている在来作物のジャガイモ。半分に切ると、中身が真っ白だ。でんぷん質が多く、栽培者の家では昔、この芋から片栗粉をつくっていたそうだ。

 いわきでしか手に入らないジャガイモを、市内の料理人が重宝している。クレープ、ピュレ、ヴィシソワーズ、ポム・パイヤソン、コロッケ。コロッケ以外はイメージが浮かばないが、なにかうまいものになるらしい。

 ネギは普通、「ねぎ坊主」から種を採って栽培する。モテネギは、ねぎ坊主ではなく、株分けで増やす「分げつネギ」だ。小川町下小川で栽培されている。今年の昔野菜フェスで昼食の昔野菜弁当に、トン汁がサービスで付いてきた。中にモテネギが入っていた。やわらかかった。酢味噌あえなどに向いているようだ。

 阿武隈の「おふくろの味」が舌の細胞にしみこんでいるせいか、ネギといえばジャガイモの味噌汁、が真っ先に思い浮かぶ。その際、“基準”にしているのがふるさとの田村地方で栽培されている曲がりネギの「三春ネギ」だ。白根はもちろん葉もやわらかい。そのうえ、香りがあって甘い。

 オクイモとモテネギも味噌汁にした。どちらもやわらかい。好みの食感だ。モテネギの甘みは? 三春ネギや「いわき一本太ネギ」まではいかない。やわらかさがモテネギの個性だろう。在来のネギの味をまたひとつ知った。

 オクイモ、そしてモテネギといわれるようになったわけは――。オクイモは晩生種、おくてのイモだ。それで「オクテのイモ」が縮まって「オクイモ」となったのではないかという。モテネギはいわきの方言由来だろう、という。いわき市教育委員会が発行した『いわきの方言調査報告書』(2003年)に「もでる(もてる)=作物が茂る。分けつ(注・正確には「げつ」)する」とある。なるほど。

 なんでもそうだが、なにかを調べれば調べるほど新たな疑問がわいてくる。同時に、栽培の歴史を利用しただけの、実態に合わないブランド戦略なんかも見えてくる。昔野菜の種には、なによりも「物語」がある。

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