2018年2月8日木曜日

いわき昔野菜フェス・中

 いわき昔野菜発掘事業の成果として、いわき市から昔野菜図譜3冊、レシピ集3冊の計6冊が発行された。事業初年度の夏に2回、市の広報と、事業を受託したいわきリエゾンオフィス企業組合のインタビューを受けた。以来、毎年発行される冊子の巻頭言を頼まれ、フェスティバルにも参加している。 
 6年に及ぶ事業最後の成果を伝える『いわき昔野菜のレシピ 3』に、付録として新たに発掘された昔野菜、小川町下小川のサトイモ「長兵衛」のほかに、常磐藤原町の「湯長谷半白(ゆながやはんじろ)きゅうり」「赤にんにく」「なっとう豆」が紹介されている。
 
 報告書では、生産者は匿名だったが、今年(2018年)のいわき昔野菜フェスティバルでわら納豆づくり講座=写真=が企画され、その講師が藤原の生産者だと知った。根本政清さん。農の営み、食の加工の達人だ。こうした達人は市内にまだまだいるにちがいない。
 
 根本さんは父親から、原料の「なっとう豆」とわら納豆のつくり方を受け継いだ。父親は3年間、茨城県で山の仕事に就いた。その間に「なっとう豆」の栽培と納豆のつくり方を覚えた。小粒の、いわゆる「水戸納豆」だ。
 
 わらがなくてもできる納豆のつくり方も紹介した。タッパーを使うといいのだそうだ。大豆をゆでる―タッパーに入れる―市販の納豆を少し加える―こたつでもいい、およそ一昼夜、40度に保温する―大豆に白い膜が張れば発酵は完了―タッパーを冷蔵庫に一日入れることでアミノ酸が生成され、味が熟れて風味が増す。
 
 納豆菌は自然界に普通に存在する。特に、わらに付く。わらを煮沸しても納豆菌は死なない。で、大昔、わらと大豆が偶然結びついた結果、納豆ができた。そこから「わらづと納豆」が生まれた。市販の納豆にも納豆菌が付いている。
 
 昔野菜の面白さは、それぞれの作物・種に「物語」があることだ。早煮えの小豆「むすめきたか」が茨城でも栽培されている。「種はいわきから来た」とかで、豆の研究者から情報提供の連絡が入った。

 越中富山の薬屋さんがお土産に北陸のネギの種を持って来た。郡山・阿久津曲がりネギがそうして地域に広まった。その田村郡バージョンが「三春ネギ」だろう。市場経済にはなじまないが、家族への、親戚・友人・知人への愛がある。その愛が栽培と継承を支えた。なっとう豆にも家族を思う栽培者の心がしみている。“タッパー納豆”に挑戦してみるか。

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