水曜日(1月31日)の「笑ってコラえて」の<ダーツの旅的世界一周>にはうなった。ディレクターが日本人未踏の地を求めてたどり着いたところは、ギリシャのエヴィア島アンティア村。口笛でコミュニケーションをとる村民がいる=写真。
鳥のさえずりのような口笛コミュニケーションに驚きながらも、思い出した本がある。作家小川洋子さんと動物行動学者岡ノ谷一夫さんが対談した『言葉の誕生を科学する』(河出書房新社、2011年)だ。鳥はなぜ歌うのか、人はなぜ言葉を話し始めたのか――。岡ノ谷さんは鳥の研究を進めるなかで、「言語の起源は求愛の歌だった」という結論に達する。
前に取り上げたときの文章を引用する。岡ノ谷さんは、人間の言葉も小鳥のようなものから進化してきたのではないかと考える。「言語の歌起源説」だ。鳥がうたうように、人間の先祖もうたっていた。そして「ある時『歌』から『言葉』へと、大いなるジャンプをなしとげた」。
鳥の求愛は、歌だけではない。ダンスもある。動物行動学者からみると、フィギュアスケートも鳥の求愛の踊りが起源だ。
小川さんがいう。「私はフィギュアスケートをよく見るんですが、高橋大輔の滑りなど、あれはもう典型的な求愛ダンスではないかと思うんです」。岡ノ谷さん、「あ、もちろんそうです」。フラダンサーの踊りも求愛ダンスだろう。しかも、頭の飾りは華麗な色彩と模様からいっても鳥そのものだ。コミュニケーションの原点は、いかに異性を引きつけて子孫を残すか、ではないのか。
口笛言語を話すのは、ギリシャ・アンティアの村民だけではない。有名なところでは、スペイン・カナリア諸島のラ・ゴメラ島。谷をはさんで数キロ離れた所にいる仲間と口笛でコミュニケーションをとる。2009年にユネスコの無形文化遺産に登録されたという。トルコにもメキシコにも口笛言語を話す人がいるらしい。
日本にも天岩戸(あまのいわと)神話がある。アメノウズメが岩戸の前でストリップをする。八百万の神が笑い声をあげる。なぜ笑っているのか―天照大神がそっと岩戸を開けかけたところを、力持ちの神がガラッと開けて昼が戻ってくる。これなどはストレートな求愛ダンスといってもいいのではないか。
口笛は、人間のコミュニケーションが鳥の歌から言語へと進化する過程で生まれたものだとしたら――。向かいの家へ行くのに、下りて上らないといけないような峡谷では、言語のほかに人類の記憶である口笛言語がよみがえる、という推測は成り立たないか。自分の肉体を使ったコミュニケーション手段は、ダンスや口笛のほかにもなにかあるにちがいない。
0 件のコメント:
コメントを投稿