白菜があればもう一回漬けよう――。きのう日曜日(2月25日)の朝、夏井川渓谷の隠居へ行く前に、ひとつ山をはさんだ三和町の「ふれあい市場」へ直行した。「白菜は?」「ないの、もう終わりだねぇ」。急に力が抜ける。今冬の白菜漬けは終わり、糠床の眠りを覚まそう――たかが漬物だが、腹を決める。つなぎの漬物をカミサンが選んだ。
ふれあい市場近くの三和ふれあい館(いわき市三和支所、三和公民館ほかの複合施設)で、つるし雛の展示会が開かれている。ふれあい市場の入り口にチラシが張ってあったのだろう。カミサンがそこへ行くという。黙って車を運転する。館内の世代間交流コーナーが会場だった=写真。
あとで検索してわかったのだが、主催団体は地元三和町の「下三坂結布喜(ゆうき)会」(下三坂手芸クラブ)だ。趣味を同じくする農家の奥さんの集まりらしい。一週間前の日曜日(2月18日)に始まり、今度の日曜日(3月4日)に終わる。
「どうぞ」。コーヒーを勧められたので、隅っこから移動してイスに座った。隣でカミサンと主催者の一人が話すのを聞くともなく聞く。「私らは農閑期にしかできない。ふだんからやってると、『なんだべ、あの人は』っていわれるから」。農閑期の作品と知って、急にいとおしくなる。
平の商家では昔、雛祭りに「つるし飾り」をした。芽吹いて間もないヤナギの枝に、動物や兵士、江戸時代の若者や娘、やっこなどの押し絵を飾った。仕事を終えた夜、人が集まって押し絵をつくったという。
「つるし雛」は、押し絵とは異なる。いわきでは最近聞かれるようになった言葉だ。記憶にあるのは、西日本出身の知人の奥さんがかなり前に展示会を開いた。それが最初だ。今は市内のあちこちで展示会が開かれる、展示している、といった記事が新聞に載る。
農閑期に少しでも心を豊かにしようと、趣味の手芸にいそしむ。山里のおばさんたちの心情がわかるのは、同じ阿武隈の山里育ちだからかもしれない。実物の2分の1くらいのじいさん・ばあさんの作品もあった。囲炉裏にあたっているところだそうだ。「目が難しくて」。カミサンと話していた女性が言う。確かに、じいさんには目がない。首からタオルをだらりとさげたあたりがリアルだった。
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