同じ職場の仲間だった後輩を介して取材を受け、単行本の恵贈にあずかった。いわき市平のヤマニ書房本店で川内さんのトーク&サイン会が開かれるというので、整理券ももらった。後日、書店からも電話が入った。きのう(12月8日)午後、イベントが始まる前に川内さんと少し話した。終わって、サイン会=写真下2=の列にも加わった。
川内さんは、母親がいわき市遠野町の上遠野(かとおの)出身だ。去年、わが家へ取材に来たときにも言っていたが、祖父の葬式で屋根の上から餅(もち)と小銭がまかれたことに度肝を抜かれたという。川内さんはそのとき、“やさぐれ高校生”だった。
トーク会場で配られた「私といわき」の小文を読んで、彼女の祖父に興味を持った。「母の実家は大きな茅葺(かやぶ)き屋根で、いつでも庭先には牛の匂いが漂っていました。母の父(私の祖父)はたいへんな読書家で85歳くらいのときに『若草物語』を読んでいて、読み終えると、本を私にくれました。私も『若草物語』が大好きになり、古い文庫本をなんども読み返しました」
祖父がおよそ92歳で亡くなり、葬式のために上遠野の母の家へやって来た“やさぐれ高校生”は、「祖父の部屋に潜り込み、大量の蔵書を読みふけっていました。不謹慎なことに、ああ、この部屋にずうっといたいとうっとりしていました」。
川内さんは、シャプラニール=市民による海外協力の会のスタッフやシニアアドバイザーと交友がある。「バウル」と呼ばれるバングラデシュの吟遊詩人を追った『バウルを探して――地球の片隅に伝わる秘密の歌』(幻冬舎、2013年=第33回新田次郎文学賞受賞)には、旧知のシャプラの創立メンバーからバウルについていろいろ教わったことが書いてある。バウルを追い続ける川内さんの執念が実った作品だ。
ほかの著作もそうだが、川内さんは国境を軽々と越えていく。今度の『空をゆく巨人』もそうだ。いわきの人々に同行して在米の蔡さんを取材した。
その根っこにあるものは人間への尽きない興味? 同じ文脈でいえば、85歳で『若草物語』を読む川内さんの祖父は少年のようにしなやかな心を持っていた。ノンフィクション作家としての川内さんは、なにがしかこの祖父の影響を受けていないだろうか。いや、川内さんはまちがいなくいわきのDNAを持ったノンフィクション作家だ、と私は思う。
0 件のコメント:
コメントを投稿