2023年10月16日月曜日

地域の自助力

 川内村の知人の話では、金曜日(10月13日)の朝は気温が3度だった。寒くて目が覚めたという。先月までは「猛暑日」でげんなりしていたのが、ウソのように冷え込んだ。

 北から、高い山から「紅葉前線」が下りてくる。毎週日曜日に出かける夏井川渓谷の森も、ほんのり色づいてきた。

 渓谷では紅葉が二度ある。最初はヤマザクラなどの広葉樹。葉が黄色から橙色になり、やがて森全体が暖色系で燃え上がる。

 それらがあらかた散ったあと、今度は谷間のカエデが真っ赤に染まる。二度目の紅葉が散ると、谷間の木々は冬眠に入り、街ではジングルベルのメロディーが流れるようになる。

 ここ何年かはしかし、8月に入ると「もう紅葉?」と誤解しそうな現象が起きる。いわゆる「ナラ枯れ」で、葉が茶色く枯れた木が至る所に見られる。

 すでにキノコの生えた木がある。そうなると、あとは風雨にさらされて枝が落ちる、幹が折れる、といった自壊が始まる。

 渓谷の県道沿いにも立ち枯れた木が散在している。車で道路を行き来するとき、葉が落ち、あるいは茶変した大木を仰ぎ見ながら通過する。

 7月中旬の日曜日、渓谷に入ると、竹ノ渡戸の隣、香後地内で谷側のガードレールが一部、大きくヘし折れるように曲がっていた。

最初、交通事故かと思ったが、車がぶつかったにしてはへこみが激しい。山側のフェンスを越えて大きな落石があったとしたら、痕跡があるはずだが……。

後日、山側の斜面を見ると、道路近くの大木が根元から折れてなくなっていた=写真。幹の直径は1メートル前後あった。

その大木が道路を遮るように倒れ、ガードレールをへこませた。直撃を受けた車はさいわいなかったようだ。

ここまで大木になると、道路管理者に始末してもらうしかない。倒木の切断も除去も、行きずりのドライバーはもちろん、地元の人間の手には負えない。それなりに重機の力が要る。

それで思い出したのが、令和元(2019)年の台風19号だった。夏井川水系を中心に甚大な被害が出た。

台風一過の翌日、隠居の様子を見に行った。建物は無事だった。風による倒木もなかった。

帰りに地元の住民と偶然、一緒になった。隠居から車を出すとすぐ後ろから軽トラックが来て、クラクションを鳴らす。車を止めると、旧知の住民だった。お姉さんが中平窪に住んでいて、浸水被害に遭った。キノコと栗のおこわをつくって持って行くところだという。ワンパックをお福分けにあずかる。

S字カーブに、切断された倒木があった。彼が区長と共に切ったのだという。それで一般の車が通れるようになった。

甚大な被害が出たばかりだから、道路管理者に連絡しても後回しにされるのはわかっている。山里で暮らす人々の自助と互助の精神が発揮された。

この10月、強風が吹き荒れた日に平地の郊外で同じようなことが起きた。区長に連絡がきた。「こんなときには役所に言ってもやってくれない」。結局、自分たちで倒木を始末したという。公助もまた地域の自助力に支えられている。


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