2023年10月27日金曜日

ヒラタケの油炒め

                     
 夏井川渓谷にある隠居は、原発事故後、庭の放射線量が平均して高かったため、平成25(2013)年初冬、全面的に除染が行われた。

庭の表土が5センチほどはぎとられ、山砂が一面に敷き詰められた。家庭菜園も消えて、いっときは学校の校庭のようになった。

が、やはり緑と菌の繁殖力はすさまじい。次第に草が生えてきただけでなく、春にはシダレザクラの樹下にアミガサタケが現れ、秋にはモミの木の下にアカモミタケが発生するようになった。

浜通りと中通り、そして会津の一部では、いまだに野生キノコの出荷制限が続く。それはそれとして、除染の済んだ隠居の庭に生える食菌は、ありがたくいただくことにしている。

周りの山は手つかずのままだ。夏のチチタケに始まって、秋のナラタケ、アミタケ、クリタケ、晩秋のヒラタケ、真冬のエノキタケ……。

発生時期を見計らい、谷沿いの小道を歩くだけでこれらの食菌が採れた。が、あれ以来、「モリオ・メグル氏」のキノコ散歩は途絶えた。

フェイスブックの画面には、私がグループに加わったこともあって、「山菜きのこを採って(撮って)食べる会」や「きのこ部」の人たちが撮ったキノコの写真がずらりと並ぶ。

夏井川渓谷ではマツタケも採れる。私は採ったことがない。マツタケを大量に採った写真などを眺めていると、驚きと羨望と嫉妬がないまぜになる。

今年(2023年)の夏は酷暑と雨不足だった。秋キノコは全般に期待できなかったのではないだろうか。

道路と隠居の敷地の境にあるモミの木などが電線の障害になるほど大きくなったため、令和3(2021)年師走、電力会社にお願いして剪定してもらった。

そのとき、こちらは家の軒下あたりまで幹を切ってもらおうとしたが、それだと「木が枯れる恐れがある。突然倒れてそばを通る車にぶつかる心配もある」というので、屋根の上あたりまで残しておいた。

それでも葉が消えて木の勢いがなくなったためか、秋になってもアカモミタケは現れなかった。

カジノキ? あるいはヤマグワ? 判断が揺れているのだが、立ち枯れてキノコ(アラゲキクラゲとヒラタケ)が生える庭の木がある。

隠居へ行くたびに幹と枝をチェックする。先日(10月22日)はアミヒラタケが発生していた。

このキノコはサルノコシカケ科(あるいはタコウキン=多孔菌科)だ。やわらかい幼菌のうちは食べられるが、すぐ硬くなるとネットにあった。食べたことはない。

たまたま視線を足元に落とすと、「あれっ、出ている!」。枯れ葉にまぎれてヒラタケが発生していた=写真。剪定枝は庭の縁に積み重ねておく。そこにヒラタケの胞子がもぐりこんだのだろう。

さっそく採って水洗いをし、家へ持ち帰って、朝は味噌汁に、夕方は豚肉や野菜などとともに油炒めにしてもらった。こんなときは、「うまい」だけでなく「楽しい」気分になる。

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