2025年1月15日水曜日

キノコ同好会の30年

        
  年末にいわきキノコ同好会の定期総会が開かれた。開催案内のはがきに「今後の会の運営について話し合いを行います」とあった。

同好会が発足してざっと30年。会員の高齢化と、それに伴う退会が続く。私も会員歴だけは古い。

若い人は入ってこない。世代交代が見込めない以上は、結論はひとつ。会員の親睦とキノコの知識の普及・啓発という目的は、十分果たされたのではないか。そんな思いで総会に臨んだ。

キノコの食毒を知りたい、というのが入会の動機だった。食欲のためだが、観察会と勉強会を重ねるうちに、キノコの世界の奥深さに触れた。

キノコは、色が多彩で形も多様。そのうえ、人知れず発生しては姿を消すものが多い。食毒を超えてキノコを学ぶ楽しみが増えた。

同時に、森で出合ったキノコから、同好会の仲間の話から、気候変動に思いをめぐらすこともたびたびあった。

南方系の毒キノコであるオオシロカラカサタケや、熱帯産の超珍菌アカイカタケがいわきで発見されたことがある。

いわきの沖合は黒潮と親潮がぶつかる「潮目の海」だ。山野でも同じように南と北の動植物が混交する。

とはいえ、海のイセエビやトラフグと同様、陸のアカイカタケなどの出現を驚きだけで終わってはいけない。

温暖化が進めば、北方系の動植物は北へ後退し、南方系の動植物は北上を続ける。気候変動が地域でも「可視化」されつつある。そのことをしっかり頭に入れておかないと――。キノコ同好会で学んだ最大の教えがこれだろう。

この30年の間の出来事では、東日本大震災に伴う原発事故が大きかった。相双地区を中心に、一時16万人強が避難を余儀なくされた。森のキノコも汚染された。いわきでは今も野生キノコの摂取・出荷制限が続く。

毎週、夏井川渓谷の隠居へ通っては森を巡った。林内では野草やキノコを観察し、秋にはヒラタケ=写真=などを収穫した。3・11以後は、それができなくなった。

キノコ同好会の会報には、事故の翌年から公的機関などで測定されたキノコの放射線量が載る。「キノコに降りかかった原発災害」には、しかし終わりが見えない。

総会ではやはり会の今後が議論された。結論からいうと、令和7(2025)年度は従来通り活動し、12月の定期総会を最後に解散する。会報第30号は総会時に発行し、最終号とすることが決まった。

今年は日本菌学会東北支部の観察会・総会がいわき市の石森山周辺で開かれる。受け入れ団体が地元にないのも寂しい、ということも、1年間の会存続につながった。

 個人的には、観察会を通じてキノコを学び、キノコを含む菌類への興味を深めることができた。同好会はその原動力だったと、あらためて思う。

0 件のコメント: